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神保哲生×宮台真司「マル激 TALK ON DEMAND」 第84回

「食の安全」という観点から見た食品表示の偽装問題 手の込んだ偽装が続出!

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「視点をクリアにする情報誌 月刊サイゾー」の記事がウェブ上で読める「サイゾーpremium」の記事から、ユーザーの反響の大きかった記事をピックアップしてお届けします。

 今年の10月末頃、阪急阪神ホテルズが自社のホテル内レストランのメニューにおいて"誤表記"があったと発表した。これを受けて、全国各地の飲食店などで同様のケースが次々と公表された。かねてより問題となっていた食品偽装と、今回の偽装表示の問題を比較しつつ、消費者が知っておくべき「食の安全」について、議論していく。

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『食品偽装との闘い ミスターJAS10年の告白』(文芸社)

[今月のゲスト]
中村啓一[「食の安全・安心財団」事務局長]

神保 今回は食品表示問題を取り上げます。巷では相次ぐメニューの偽装表示が話題になっていますが、宮台さんは一連の事件をどう見ていますか。

宮台 中立的に言うと、僕たちが生まれ育った昭和30年代や40年代にはあり得なかったことです。個人的に言うと、食品添加物の表示偽装と違い、どうでもいいと感じます。豊かさがもたらしたグルメブームを背景に、食材の産地を中心に、昔は注目しなかった情報に人々が注目するようになった結果です。もちろん嘘はいけませんが、「我々も随分細かいことを言うようになったものだ」と溜息が出ます。

神保 メニューについては、使われている食材がちょっと違っていたということで、ホテルチェーンやレストランなどが厳しい批判にさらされています。しかし、その一方で、健康にも影響を与える可能性のある食品添加物の表示については、ほとんど問題になっていません。今日、たまたまコンビニのサラダを食べたのですが、きざんで数時間も経てば黒ずむはずのキャベツが、数日経ってもきれいなままの状態でした。これは、あらかじめ次亜塩素酸ソーダに漬けて漂白しているからだと思いますが、もちろんパッケージには次亜塩素酸ソーダの文字はありません。そのことは気にならず、「霧島ポークがほかの豚肉だった」ことは絶対に許せないという感覚は、ややバランスを欠いているような気もします。

宮台 まさにそこです。僕には過剰反応に思えます。

神保 また、今回の「メニュー偽装」よりも大きな問題として、「食品偽装」があります。6月に食品表示法が改正され、2年以内に施行されることが決まっているので、今回は食品表示の問題もきちんと整理しておきたいと思います。

 ゲストは公益財団法人食の安全・安心財団の事務局長で、かつて農水省の行政監視官、いわゆる「食品表示Gメン」をされていた中村啓一さんです。さっそくですが、いわゆる食品表示問題ではなく、最近話題になっているホテルなどでのメニューの偽装表示の問題について、どのように思われますか?

中村 メニューの問題が世の中では「表示偽装」と言われていますが、加工食品の表示偽装とは違う問題です。そもそもなぜ加工食品に表示が必要になったかと考えると、消費者と生産者が遠くなり、売り場に会話がなくなったから。昔は消費者が売り場でコミュニケーションを取り、いろいろな情報を仕入れることができましたが、今は無言で買い物ができるので、消費者が情報を集めるにはパッケージしかない。その状況で加工食品の表示がバラバラでは困るので、画一的な表示の制度を作ったのです。

 外食がその対象ではないのは、外食は加工の現場、すなわち調理場がお店にあるからです。消費者と接点のある場でものが作られていて、その個性を消費者が選んでお店に入る。ですから、加工食品と同じような統一的な表示規制は外食にはいらない、ということになっています。例えば、私がよく行く定食屋では、お昼のメニューに「今日の焼き魚」としか書いてありません。けれど、「おばさん今日は何?」「サンマよ」という会話があればそれでいい。ですから「表示」という一面的な見方で、外食のメニューを語るべきではないと考えています。

神保 今のところもっぱら、メニューに記載されていた内容が、消費者が思っていたものと違ったことが問題になっているようですが、法的にはフレッシュジュースの「フレッシュ」の定義や、一度冷凍したものを「鮮魚」と呼ぶかどうかなど、もともと食品表示法では定義されていないことが問題になっているという印象を受けています。

中村 スーパーの鮮魚売り場では解凍のものも売っており、そこでは表示が必要です。しかし、盛り合わせの場合は必要ない。ホテルが「誤表示」と公表したために、「鮮魚」という表示に関しても偽装だと盛り上がっていますが、落ち着いて考えてみると、盛り合わせの中の解凍したマグロについて「鮮魚ではない、けしからん!」となるでしょうか。今回は明らかに問題のある行為とそうでないものが混ざって表に出て、混乱を呼んでいる。多くのメニュー表示問題は、「偽装」というには少し稚拙です。

神保 過去に食品偽装問題が相次いで起きていたために、社会全体が食品表示全般に不信感を抱いていたところに、今回のメニュー偽装が発覚して、やや過剰とも思える反応をしてしまったということでしょうか。

中村 表示制度はなかなか複雑です。今回も公表するときに専門家のチェックを受けて、背景を調べてから公表するべきでした。例えば「信州蕎麦」が長野県産でなかった、という問題ですが、蕎麦粉が長野県産でなかったことが問題であるならば、ほとんどの蕎麦は「信州蕎麦」ではなくなってしまう。今の制度では、長野県で製麺すれば「信州蕎麦」と呼べます。そのように、何を持って自ら「誤表示です」と言ったのか、よく伝わってきません。

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