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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第58回

大手新聞2社の社長の不倫証拠写真、“新聞業界のドン”が探偵使い入手し公表間近

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「Thinkstock」より
【前回までのあらすじ】
業界最大手の大都新聞社の深井宣光は、特別背任事件をスクープ、報道協会賞を受賞したが、堕落しきった経営陣から“追い出し部屋”ならぬ“座敷牢”に左遷され、飼い殺し状態のまま定年を迎えた。今は嘱託として、日本報道協会傘下の日本ジャーナリズム研究所(ジャナ研)で平凡な日常を送っていた。そこへ匿名の封書が届いた。ジャーナリズムの危機的な現状に対し、ジャーナリストとしての再起を促す手紙だった。そして同じ封書が、もう一人の首席研究員、吉須晃人にも届いていた。その直後、新聞業界のドン太郎丸嘉一から2人は呼び出された。

 吉須晃人も気後れするような男ではない。太郎丸嘉一の発言を逆手に取った。

「特定しているって、『リバーサイドホテル』と『シスレー・タワー二番町』ですか」

 太郎丸は一瞬、目を剥(む)いたが、すぐに、眼元を緩め、頼もしげな眼差しで質した。

「お主らは二人の不倫の現場を知っちょるんか。村尾(倫郎)君の不倫相手のことは日亜の社内で常識になっちょるが、松野(弥介)君は恐妻家で、あの男にしては考えられんほど、細心の注意を払っちょるらしいから、社内でも察知しちょるのは少ないと聞いちょる。密会場所は誰も特定しちょらん、と思っちょった…。どうして知っちょるんじゃ?」

 吉須は深井宣光と顔を見合わせた。

「確かに会長のおっしゃる通りで、松野さんはひた隠しにしているし、うちの村尾も側近にしか、自分の住所や携帯も教えない、秘密主義です。僕らが知らないのが当たり前で、会長がいぶかしがるのももっともです。でも、ひょんなことで、1週間前に深井君と二人で飲んだ時に密会場所を突き止めたんです」

 吉須はこう説明したうえで「偶然が偶然を呼ぶっていうか、こんなことがあるのかって感じだったよな、深井君」と言って、同意を求めた。深井が頷くと、吉須は体験を説明した。

①1週間前に人形町で食事をした後、リバーサイドホテル25階のバーで飲んでいたら、松野の愛人の花井香也子らしき女性がバーに入ってきた

②バーを出てホテルの玄関を出ようとしたとき、ホテルに入ってくる松野を目撃した

③ホテルを出た吉須は一旦はタクシーで自宅に向かったが、野次馬根性から途中でホテルに引き返し、再び、25階に上がると、エレベーターに乗り込む香也子らしき女性と出くわし、彼女が21階の客室に向かったのを確認した

④吉須がもう追っても無駄だと思い、待たせていたタクシーに戻ろうと、ホテルの玄関を出ると、ホテルに入らず客待ちタクシーに乗り込む村尾を目撃、その後をつけた

⑤その結果、村尾のひた隠しに隠している、四ツ谷駅近くの高級賃貸マンションを見つけ、そこが吉須の自宅マンションと目と鼻の先だった

 吉須の説明が終わると、お湯割りをちびりちびりやっていた太郎丸は自分の膝を叩いた。

「ふむ。それは本当に偶然が偶然を呼ぶという感じじゃのう…」

 そういうと、太郎丸は唸ったまま、呆気にとられたような様子だった。しかし、しばらくすると、太郎丸は忘れ物に気づいたような顔つきをした。

「おい、じゃがな、お主らは二人の不倫相手の顔は知っちょるのか?」
「村尾の愛人の芳岡由利菜は知っていますが、松野さんの花井香也子の方は、大都の深井君も知りません。それに、村尾の方もマンションがわかっただけですから、現段階は想像の域を出ません」

 吉須が残念そうな表情で答えた。

「僕らが不倫の現場を知った経緯は吉須さんの話した通りですが、会長はなぜ二人の密会場所がわかったんですか。それも教えてくださいよ」