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不妊治療、なぜ女性を蝕む?~卑怯な男性、周囲の無理解、医療の進歩が闇を深くする

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●卵子が老化するという事実

 ここで、前回ご紹介したグラフを再掲します。

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 青色の棒グラフは、母の年齢別の子どもの出産数の比率を示しています。母の年齢が上がるにつれて子どもの数が減っており、特に30代前半から後半にかけての下落は激しいです。赤色のグラフは、ARTを受けたカップルの妊娠の成功率です。

 強制的であれ、受精さえすれば不妊問題は解決したも同然――と考えていた私は、ARTのデータを見て愕然としました。一番可能性の高い20代ですら、ARTによる妊娠成功率は30%にすぎないのです。図3に示した体外受精に至っては、20代であっても、その成功率はたかだか20%です。あまり知られていませんが、そもそもARTによる妊娠成功率は低いのです。

 ただでさえ少ない成功率なのに、20代→30代→40代→50代の順番で、およそ3→2→1→0という比率で減少しています。

 その中でも体外受精の成功率は、25歳:21%、30歳:20%、35歳:17%、40歳:8%、45歳:0.5%となっており、女性の年齢上昇とともに急激に下がることが明らかです。

 これこそが、「産みたいのに産めない」という悲劇の根源――「卵子の老化」によるものなのです。

 女性は原始卵胞を抱えて誕生し、その後、一方的に減少していき、さらに年齢とともに老化し、受精する能力を失って行きます。特に35歳を経過した後、卵子の老化は急速に進行します。

 今回の執筆まで「体外受精の技術さえあれば、年齢に関係なく子どもをつくれる」と思っていた私は、絶望的に無知だったと認めます。

 しかし、日本人の多くもまた(女性も含めて)、この「卵子の老化」の事実を知りません(参考:テレビ番組『NHKスペシャル 産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~』<2013年6月23日放送>)。

「閉経」まで受精や妊娠のチャンスが等しくあるわけではないのです。現在のところ、どのような生殖治療を施そうとも、「卵子の老化」の前には、打つ手がないのです。

●体外受精の成功率はまだ低い

 国内の20~49歳までのカップル1500万組中、不妊の治療や検査を受けたことのある夫婦は6組に1組(約250万組)です(http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou13/chapter5.html)。

 そのうち、実際に約50万組が不妊治療を受けており、そのうち平成23年度に、現時点での最終手段とされている体外受精を実施したカップルは27万組に達しています。しかし、27万組のうち、実際に出産した数は、わずか3.2万組(15%)です。これほど出産数が少ないのは、受精が成功しない、または成功しても受精卵が子宮に着床せずに流産してしまうからです。

 1978年、英国ランカシャー州オールダムの小さな病院で、世界最初の体外受精による女の子が誕生した時、それを祝福する者は絶無で、世界中が「試験管の中で恐ろしいモンスターが誕生した」と非難の声を上げていました。ちなみに、バチカンは今でも不快感を示しています(『デザイナー・ベビー―生殖技術はどこまで行くのか』<ロジャー・ゴスデン/原書房>)。

 それが今や、日本の約50組に1組のカップルが体外受精を行う時代になったのです。

BusinessJournal編集部

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