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吉田潮「だからテレビはやめられない」(1月10日)

“意外に”面白かった年始テレビ番組は?テレ東恒例時代劇、愛情希薄な(?)恋愛ドラマ…

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『30分だけの愛』公式サイト(「読売テレビ HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


 年始のテレビ番組はだらだらとしたバラエティモノが多くて、あまり真剣には観なかった。ただし、今年は正月特別ドラマがわりと面白かったように思う。

 例えば1月2日に放送した西田敏行主演の『影武者 徳川家康』(テレビ東京系)は、5時間もあるのに飽きずに観続けることができた。テレ東の恒例「新春長時間時代劇枠」は、その立ち位置も視聴率も微妙で、存在自体が年々グダグダになりつつあったのだが、今年は簡素でいい出来だった。西田が徳川家康の影武者を演じたのだが、いつもの「狙った感が強い剽軽さ」を封印。淡々と骨太な人間ドラマとして描いたのがよかったのだろう。

 そして、もうひとつ。連続ドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系/2011年放送)で高視聴率をマークした脚本家・遊川和彦が手掛けた特別ドラマ『30分だけの愛』(読売テレビ・日本テレビ系/1月2日放送)も、期待以上に面白かった。ドラマの設定(カテゴリー・テーマ・主人公の職業)を遊川自身がダーツで決めるという試み。かくして、「ラブストーリー・泥沼に咲く花・マッサージ師」の設定となった。その遊び心、制作側にしてみれば大変かもしれないが、視聴者にとっては正直どうでもいい。どんな設定であれ、遊川が描くドラマは絶対に観たいと思うので。

 主演は小池栄子と小澤征悦。小池は笑顔を絶やさない頑張り屋の訪問マッサージ師だが、実は母親との確執を心に抱えている。母と子供が戯れる微笑ましい光景に対して、心の中では罵詈雑言を浴びせて毒づく妄想をしたりもする。このあたりは非常にリアルだ。

 小池が訪問マッサージで訪ねたのは、エリート証券マンの小澤の家。くも膜下出血で右半身不随になったプライドの高い男で、金の力しか信じていない。当然、介護はヘルパーなどの外注業者のみ。離婚した妻は養育費支払い能力の懸念しかせず、介護は一切しない。もともとの高慢ちきな性格に加え、半身不随で思うように体が動かない苛立ち、人間不信などで、どうしようもないクレーマー患者に成り下がっていた。

 要は小池と小澤のラブストーリーで、ラストにはかなり甘い言葉の応酬がある。ちょっと照れくさくなるような恋愛モノとしても楽しめたのだが、そこはやはり遊川和彦。単純な恋愛だけでなく、「家族愛」もきちんと描きこんでいた。といっても、必要以上にベタつく家族愛ではない。絆を騙る薄っぺらいお涙頂戴モノではない。そもそもが愛情希薄な人間観をベースに、満身創痍な人物たちが凍った心を融解していく物語になっていた。

 ま、簡単に言えば、性格のひねくれた不完全な人間を描くのがうまいのだ。もちろん、この世の中に完全な人間など皆無だが、テレビドラマではそこをつい美化しがちである。オブラートに包んだ人間像で誤魔化すことも多い。ところが、遊川作品は容赦しない。寂しい人間、不器用な人間、親子関係をうまく築けなかった人間など、厳しい現実もあからさまに映し出してしまう。セリフひとつひとつに、このストレートな人間像が反映されるため、観ている側は「コイツ、どうしようもないヤツだな」と思いながらも、ついうっかり惹きつけられるのである。『家政婦のミタ』も同様だったと思い出した。

 そして、主演の小池と小澤。頭蓋骨が妙に立体的でちょっと似ているふたりだが、化学反応のある組み合わせだった。肌の露出は一切ないのに、妙にエロいところも個人的にはツボである。年始に良作に巡り合うと、1~3月期の連続テレビドラマがかすんでみえるかもしれないな。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。