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震災から19年、神戸市がもたらした“復興災害”~市民の資産毀損させ、他県企業優遇

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 震災の復興計画にかかわったある都市プランナーは、「1月23日の日付の入ったメモを神戸市の担当者と相談した時にいただきました。当時のペーパーを整理したものが、『神戸市震災復興計画予定事業』という表です。結論だけ申しますと、26日にほぼ現在の事業決定の内容に近いものができあがっています」と著書で明かしている。

 当時、神戸市は「二段階都市計画決定方式」であることを強調。第一段階において、都市計画事業の区域や骨格施設を決定。その上で、詳細な計画の中身については、各町内会の代表で組織される「まちづくり協議会」で話し合われ、住民総会で決定するという段取りだった。しかし、再開発の場合、第一段階で決定した内容を、住民レベルで変更できる余地は与えられていなかった。「まちづくり協議会」で、住民の意向に沿って住民案をつくり上げていくはずが、実態は神戸市からコンサルタントが派遣され、協議会の役員たちはコンサルタントの誘導に従って「住民案」をまとめ上げた。

●80平米の店舗を月額1万円で賃貸

「もうね、去るも地獄、残るも地獄ですわ。人通りもまばらでしょ。その上にリーマンショックなんかあって、店をやめようと考えました。そうなると売却するか貸すかなんですが、後腐れないように整理するには売却が一番と考えて不動産業者にいくらで売れるか査定してもらいました」と、「アスタくにづか」で商店を営んでいるAさん(仮名)は語る。

 だが、査定を依頼した不動産業者からは予想外の一言が返ってきた。

「これは、難しいやろなー」

 不動産業者は具体的な数字を言わなかった。「難しい」と言う真意をAさんは問いただしたが、奥歯にものが挟まったように言葉を濁した。

 そこでAさんは、ほかの不動産業者にも査定をしてもらった。結果は、「売ったり貸したりするのは難しいですね。アスタくにづかの商業ビルは、値段がつけられないほど価値が下がっているんですよ」とのことだった。

 値下がりの理由は、神戸市の保有する商業フロアを管理している「新長田まちづくり株式会社(以下、まちづくり社)」が、テナント業者に対して約80平米の物件を月額1万円で賃貸していたことにある。もはや“ただ同然”の価格である。まちづくり社は新長田駅南地区を一元管理するために設立された第三セクターで、神戸市は同社の2番目の株主に納まっている。

「不動産業者が『売るのは難しい』と言ったわけが、ようやく理解できました。管理費割れするくらいの額で貸しているんですから、そりゃ、資産価値は下がりますよね。売りたくても売れない状況です」(Aさん)

●税金を投入して内装費も肩代わり

 さらに、神戸市は復興基金を使い、分譲の商店主には内緒で、新規契約者に3年間の家賃の減免措置を行っていた。また空き店舗対策として2007年度以降で計45店舗に対して3億円以上の内装費を肩代わりしていたというから驚きだ。商業床の約半分が売れ残る中、賃貸で入居する店舗のために内装費を神戸市民の税金で負担していた。ちなみに、先に入居している分譲店舗は内装費を自腹で自己負担している。

 再開発地区全体の商業フロアの面積は7万4000平米。計画当初、神戸市は賃貸を予定していなかった。しかし売れ残った空き店舗対策として賃貸の入居を実施。商業スペースが50%以上も分譲できず、神戸市所有のまま、まちづくり社にリースしている。まちづくり社はただ同然の家賃であっても、「空き床のまま残しておくよりはまし」との姿勢を取り続けているが、解決への抜本的な対策とはなっていない。そもそも、分譲のみという神戸市の当初の方針に従い、震災後商売を再開するために借金をして区分所有者となった地元の商店主からすれば、あまりにも公平性を欠いている。

 同じく、「アスタくにづか」で商店を営んでいるBさん(仮名)は、次のように話す。

「神戸市から買ったときはスケルトンでした。入居時に内装費などで借金をしました。今までは長屋で商売してきて、管理費なんてなかった。商業床が売れ残っているからといって、公にできないような破格の賃料で賃貸して、市民の税金で補助している。復興基金は被災者のために使われるのと違うんですかね? 被災者でもない他府県の企業が入居する際の内装費は全額補助で、私らは補助なしです。中には3700万円も補助をしてもらっている店舗すらある」

 このような意見に対し神戸市は、「賃貸条件は交渉で決めていくので、隣り合わせのテナントでも条件が違っていて当たり前」と説明しているという。

「再開発は神戸市が構想した計画で、言うなればパブリックスペースです。朝から晩まで電気がついていて豪華な施設の管理費用などは、分譲の入居者が負担しています。ビルによっては共用部分が多いところは固定資産税の負担も大きいのに、神戸市は月に1万円という固定資産税を割るような家賃で貸し出しており、これは納税者の立場からしても納得いきません」(Bさん)

 まちづくり社が独自に家賃の減免や内装の負担を行ってきたことが、再開発ビルの床全体の価値を下落させてしまっている。ある店舗は480万円で売りに出されたが、その一週間後には380万円にまで下がった。これは当初の購入価格の約1割の額だ。今や、競売にかけたり投げ売りをする店舗も出てきている。

 このような状況に陥った原因は神戸市にあり、責任は重大であるといえる。
(文=山口安平)

BusinessJournal編集部

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