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万引き、困難さ増す店側の対応と経済的喪失~防犯強化・訴訟回避・顧客満足をどう両立?

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 さらに踏み込んで、監視カメラのシステムと顔認証システムを結びつけた万引き窃盗)防止のための顔認証システムを提供している会社もあり、一度万引き(窃盗)行為を行った事実を登録した来店客が再度来訪するたびに、システムからアラートが出るようなものもあるようです(顔認証万引き防止システム「LYKAON」<http://www.face-lykaon.com/>)

 監視カメラと顔認証の組み合わせについては、いまだに議論が尽くされていない部分もありますが、すでに小売店等で一般的になった監視カメラと、Facebookやスマートフォン(スマホ)カメラ、デジカメでも使用されている顔認証システムを、店舗内の防犯を目的として活用している製品・サービスもあります。

 ただし、こういった監視カメラと顔認証システムを統合した製品を活用するためには、来店客の不快にならない買い物環境づくりが重要であり、監視されている雰囲気を出さないように注意しなければなりません。また、万引き(窃盗)犯と不用意に接触して従業員が怪我をさせられることのないような対策も検討しておく必要があるでしょう。

●プライバシー保護の問題

 最後に、監視カメラの利用とプライバシーの問題について触れておきたいと思います。

 日本弁護士連合会は、2012年1月19日に「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」を発表しています。この中で、以下のような意見を付しています。

<9.監視カメラの設置基準について(抜粋)>
(4) 施設・店舗等における設置基準
施設・店舗等のうち、不特定の者が自由に通行できない領域については施設管理権が重視され、施設管理権を有する者の判断により監視カメラを設置することが認められてよい。しかし、不特定多数の者が自由に通行できる領域については、通行者たる不特定多数の者のプライバシー権との比較衡量が必要である。したがって、そのような場所について監視カメラを設置することの可否は、以下の場合に限定すべきである。
(1)犯罪やトラブルが発生する相当程度の蓋然性があるなど、明確な必要性が認められる場所であること。
(2)監視カメラの設置により、(1)で想定した犯罪やトラブルを予防する効果を具体的に期待できること。
(3)監視カメラを設置した場合は、上記第三者機関に対し届け出をすること。
(http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120119_3.html)

 監視カメラの設置については、防犯の目的を遂行できるかどうかという点について、さらなる議論の余地を残していますが、営利企業が管理すべき店舗内での犯罪の抑止という観点からすると、店舗スタッフや万引きGメンなどの即応体制の整備だけではなく、従業員が安心して働ける環境を整える目的からも、監視カメラの設置と体系化された防犯・通報体制の構築が重要になっていくものと思われます。
(文=荒川大/株式会社ENNA代表取締役)

●荒川大(あらかわ・ひろし):株式会社ENNA代表取締役。人事コンサル会社、人材紹介会社にて営業、ITセキュリティコンサル会社にて人事・総務に従事。07年に株式会社ENNAを設立し、上場企業のガバナンス体制構築及びリスクマネジメント体制構築等を支援。

BusinessJournal編集部

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