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吉田潮「だからテレビはやめられない」(3月9日)

ソチ五輪話題の解説、深夜&ローカル局のテレビ番組…粗い“中毒性”脱力系が際立つワケ

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『ダークシステム~恋の王座決定戦』公式サイト(「TBS HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 ソチ五輪の脱力系ハイテンション解説で一躍有名になった三浦豪太(どえらい金かけてエベレスト登頂した三浦雄一郎の息子ね)。緻密な取材力(?)で拾い集めた、どうでもいい周辺情報を盛り込み、自分の興奮そのままに解説しまくる。間違いなく“迷”解説だった。興奮と緊張で固唾をのんでいる茶の間をうっかり脱力させて、ほっこり笑かした功績は意外と大きい。何をしでかすか、つい耳を傾けてしまうという中毒性もある。

 テレビドラマ界にも、この手の脱力系中毒性作品がある。表現するならば「最高にくだらないのに毎週予約録画してしまう」ドラマである。今クール(1~3月期)の『ダークシステム~恋の王座決定戦』(TBS系)と『押忍!!ふんどし部!シーズン2~南海怒濤篇~』(略して『おすふん』、TOKYO MXほか)だ。

『ダークシステム』は男子の妄想恋愛がなぜか「戦闘」スタイルで描かれるという、よくわからない世界観である。貧乏で小心者、自己中心的な性格の主人公・加賀見次郎(八乙女光)が好きな女子を手に入れるべく、四畳半の部屋でさまざまなマシンを手づくりし、恋愛成就を阻む敵を倒していくという物語なのだが、ホント、いちいちくだらないのである。  

 八乙女はヒーロー気取りの割に、エゴイストで自己保身に余念がない役どころ。ついでに言えば、主人公だけでなく次々に登場する仮想敵(板尾創路とか)がこれまた卑屈な小物ばかりでどうしようもない。手づくりしたマシンの必殺技にいちいち名前をつけたり、「ズシャーッッ」などの擬音をためらいもなく口にしてしまうあたりは、まるで幼少男子の無邪気さ。音や映像はわりと暗め重めに作っているのだが、中身が底抜けに軽くて薄い。それでも毎週観てしまう。なんなんだ、この中毒性は。

 もうひとつ。『おすふん』は若い俳優たちが白ふんどし一丁で歌って踊る、というミュージカル仕立ての学園モノ。シーズン1から欠かさず予約録画しているのだが(オンエアでは観ない)、そもそも視聴のきっかけは古田新太の出演だった。「白ふん流し」なる伝統のイベントを復活させようと、クセのある男子高校生たちが奮闘する物語なのだが、古田はふんどし部OB(しかも亡くなっている)として登場。白ふん+法被姿でちょいちょい出てくるのだが、気合ゼロ、気負いゼロ。出てくるだけで脱力感。同じくOB役の池田成志とやりたい放題。若い男子の白ふん姿目当てで視聴する人を軽く裏切るテイストでもある。

 堀内敬子(古田の元恋人で学園の理事長役)や大倉孝二(ゲイの養護教員役)など、脇役の固め方もマニアック。この前はうっかりキッチュが登場。キッチュっつっても若い人はわかんないか。松尾貴史である。今や知性派コメンテーターとして名を馳せているが、岡本太郎のモノマネで有名になった芸人でもある。しかも今回は映画監督・黒澤明のモノマネで登場。

 深夜枠、あるいはローカル局ならではの自由度と粗さ。キー局&ゴールデン枠のドラマが品行方正を強いられている現状で、こうした脱力系作品の存在は必要悪である。揺るぎない正義感の押しつけ、まっとうで健気な闘病、無難な枠内で収めようとする医療モノや警察モノが王道だとすれば、この邪道な脱力感は視聴者の心をいたずらにくすぐるわけだ。

 三浦豪太の無邪気で奔放な解説が引き立つのも、NHKアナウンサーの無難で公正なフォローがあるからこそ。世の中のバランスって、こういうことなのよね。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。