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吉田潮「だからテレビはやめられない」(3月24日)

ドラマ『LEADERS』の裏命題とヒリヒリする現実?熱量あふれるも感情移入できないワケ

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『LEADERS リーダーズ』公式サイト(「TBS HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 私の親の世代はトヨタやソニー信奉者が多かった。父が選ぶ車はずっとトヨタ車だ(カローラ、クラウン、プリウスと王道である)。ソニー愛好者はうっかり「ベータ神話」にダマくらかされて煮え湯を飲まされたわけだが。おっと、若い人は知らないだろうから、解説しておこう。その昔、ビデオテープはVHS規格とベータ規格ってのがあった。ソニーはベータをゴリ推ししていたんだが、主流はVHSになってしまい、衰退の一途を辿ったという黒歴史がある。でも、トヨタは他の追随を許さず、トップを走り続けてきたワケで、昭和世代には根強いブランド力があるのだ。

 そんなトヨタの創業ヒストリーを壮大なドラマに仕立てたのがTBS。『LEADERS リーダーズ』(3月22日・23日放送)は佐藤浩市を主軸に、大量の昭和っぽい名優を揃えて挑んだ。ただ、番組宣伝をやりすぎて、見どころの熱や温度を冷ましてしまったような気もする。日本人は「チラ見せ」に興奮する人が多いのだから、番宣控えめでよかったのに……。

 第二次世界大戦前から「純粋な国産自動車を!」と奮闘するひとりの男と、その周囲で身を粉にして彼を支持する男たちの物語。時代の流れに翻弄されながらも、熱い思いを貫き続けて、世界有数の自動車会社へと成長する一歩手前までの過程を描いている。

 トヨタの、いわば苦労話と台所事情がメインストリームだ。「日本人の勤勉で地道な職人魂」とか「社員は家族という絆主義」という暑苦しい企業精神は充分伝わってきた。スーツを着て、資金繰りに奔走する佐藤の手が常に油で黒く汚れているところ、とかね。

 第一夜は、徹夜残業で低賃金でも「夢」のために必死で働く企業人の連帯感をきっちり描き出していた。声を上げて喜び、抱き合い、涙を流し……って、こういう連帯感はほとんど見かけなくなったもの。高橋和也(元・男闘呼組で実力派俳優に昇進)や緋田康人(悪役ヅラの名脇役)の熱演も、異様に浮かずに済んだのは全体的に熱量があったからこそ。

 ただし、この男たちの清い熱量垂れ流しの連続には、ちょっぴりうんざりした人もいるだろう。飽きて、第二夜を観なかった人は損をしたと思う。融資取り付けの焦燥感や労働争議の集団心理をメインとした第二夜のほうが、感情の振り幅も大きく、面白かったから。

●なぜか感情移入できないワケ

 最も胸のすくシーンは、融資を渋って暴言を吐きつけた銀行の支店長・吹越満を日銀の名古屋支店長・香川照之が一喝するところだろう。みんな大好き、半沢直樹風味の意趣返しである。視聴者もうすうす既視感を覚えながらも、おおいに期待していたはず。久しぶりに香川の顔面“表情筋”芸を堪能できたシーンでもある。