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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第19回

ニフティ子会社、商品供給停止と保証金の違法取り立てで、小売業者を廃業へ追いやる

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「写真素材 足成」より

「ブラック企業アナリスト」として、テレビ番組『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)、「週刊SPA!」(扶桑社)などでもお馴染みの新田龍氏。計100社以上の人事/採用戦略に携わり、数多くの企業の裏側を知り尽くした新田氏が、ほかでは書けない「あの企業の裏側」を暴きます。

 ニフティ株式会社といえば、インターネット草創期からプロバイダサービスを展開し、現在もウェブサービスやクラウドサービスで年商800億円を売り上げる、東証二部上場の大企業である。

 そして今回取り上げるのは、そのニフティの子会社である、株式会社プロミクロス(以下、P社)だ。P社はクリニック・動物病院に必要な医療資材を小ロット・短納期で販売する事業を、カタログ通販を中心として展開している。「材料のカタログ通販」でピンと来た人もいるかもしれないが、同社はニフティ傘下に入るまでは、株式会社ミスミのグループ会社であった。

 ニフティはチラシ&レシピ検索サイト「シュフモ」など、ターゲットを絞り込んだウェブサービス開発と運営に注力しており、P社のネットワークを取り込むことで動物病院とぺットの飼い主へも食い込んでいこうという考えがあったようだ。

 そのP社が、いまや上場企業関連会社になったにもかかわらず、違法な手口で債権回収を行っているというのである。

 上場企業であれば、債権回収についてのコンプライアンスは特に厳しく、基本的には弁護士に一任するよう指導されている。そんなセンシティブな領域で違法な行為をすれば、企業にとって致命傷にもなり得る話だ。

●1回の支払い遅れで取引中止

 まず、今回の被害企業は神奈川県内でペット生体やペットフードなどを販売しているO社(仮名)で、動物病院などに出資もしている。

 O社は以前、自社で小売りするためのペットフードを複数の卸業者から仕入れていたのだが、P社からの強烈な営業攻勢があり、仕入れ先をP社一本に絞ることになった。しかし、ある時、O社側のミスで月末にP社へ支払うべき約1000万円の売掛代金を月明けの振り込みとしてしまったことがあった。これが事件の始まりである。

 O社はミスに気づいてP社へ連絡し、すぐ振り込みをしたが、P社は即時「O社との取引停止」を宣言し、商品供給を停止したのだ。「当社は上場企業ニフティの子会社であり、振り込みしないなどの行為には厳正に対処する」というのがP社の言い分だった。

 O社は、商品が入ってこなければ営業は続けられないため困惑した。そこをP社は突いてきた。「保証金として500万円支払えば、当社の便利なシステムを使える。倉庫は当社で持ち、配送まで行うので、御社は発注するだけでいい。倉庫代と人件費を削減できる」と持ちかけてきたのだ。提案通りならコスト削減できるし、取引も再開できると考えたO社はその話に乗り、P社に500万円を振り込んだ。

 しかしその翌日、話は急展開する。P社から「やはり500万円では無理だ。1000万円支払ってほしい」との連絡が入り、すべて口頭だけのやり取りをしていたO社側は不審に思い、話を先に進めなかった。

 そこから、P社の容赦ない攻勢が始まる。追加の保証金を支払わないことを盾に、O社への商品納入は止めたままだ。このままでは販売を再開できず売上が立たないので、O社にとっては大いに痛手だ。しかも1000万円の支払いを承諾したわけでもないのに、何度もO社の社長個人の携帯電話に連絡が入り、「どこに行くのか?」「いつ会えるのか?」と、しつこく聞いてきた。「今日は会えない」と言って電話を切っても、夜中までひっきりなしに電話がかかってくることさえあった。

 さらにその後、O社が出資するクリニックにP社の社員が5人で押しかけてきた。彼らは客が普通にいるクリニック内に居座り、大声で「社長いるか? 待たせてもらうよ」「ここの社長がカネを払わなくて困る」と言い、居座り続けたのだ。彼らは東京商工リサ―チの調査報告書を取り出し、「ここにO社の関連先企業としてクリニックが書いてある。電話がつながらないから社長を訪ねて来た」とも言った。結局、彼らは丸々2時間も営業妨害を続けたのであった。

●違法な取り立て

 今回の場合、P社側に問題となる点が3つある。

(1)「商品供給ストップ」や「不明瞭な保証金要求」など、法的にグレーな行為があること

 確かに事の発端こそO社側の支払い遅れであったが、週末などの関係で月をまたいでしまうことは中小企業ならままあることであり、O社は連絡を入れた上で支払いは月明けに行っている。それにもかかわらず、取引を全面停止するのは行き過ぎといえるだろう。

「仕入れが途絶えれば、支払いもできなくなる」ことは自明であるから、P社側は故意に取引を中止した可能性がある。今回のケースでも、O社への営業攻勢の時点から、故意に商品/資金流通を止めることで資金ショートさせることを狙っていたと考えられる。

(2)「大人数で居座って取り立てる」行為は違法である可能性が高い

 これは貸金業法21条において、「取り立て禁止行為」として明確に規制されている。

「債権業者又は債権取り立てについて委託を受けた業者は、債権の取り立てをするに当たって、人を威迫し、又は人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない」として、次のような事例を明記しているのだ。

・多人数で債務者の居宅等に押し掛ける行為
・暴力的な態度をとったり、大声をあげたり、乱暴な言葉を使ったりする行為
・債務者の居宅等を訪問し、退去を求められたにもかかわらず、長時間居座る行為

 まさに本件のパターンにそのまま合致する。ちなみに同行為を行った場合、刑事罰として6カ月以下の懲役、または100万円以下の罰金に相当する。P社は貸金業者ではないが、上場会社の子会社がこのような行為をすることは社会的に問題だろう。また、刑法に規定する業務妨害罪に該当する可能性もある。

(3)資本関係があるとはいえ、O社と別の法人格であるクリニックに押しかけて故意に嫌がらせをしていること

 そもそも、資本的なつながりがあろうがなかろうが、債務者の居宅や勤務先以外の場所に債権業者が訪問してはいけない。

 ドラマやマンガの世界ではよく見かける次のような行為も、すべて現行法では禁じられている。

・正当な理由なく、午後9時以降午前8時までの間に、債務者の家を訪ねたり、電話、ファックスをすること
・貼り紙、立看板などで、債務者の借金や私生活を、債務者以外の者に明らかにする行為
・債務者に、別のところからお金を借りるように要求すること
・債務者の家族、親族、友人、知人、同僚などに債務者の借金を支払うように要求すること
・債務者が居場所や連絡先を教えることを拒否しているのに、さらにそれを要求すること

 本件のポイントは、上場企業関連会社が債権債務関係もないのに、違法取り立て行為を行っているということにある。結果としてO社は商品納入が滞り、ペットフード小売事業を廃業せざるを得なくなってしまった。

 現在、親会社のニフティ、およびP社の顧問弁護士である村島・穂積法律事務所に取材申し込みをしているが、返答はないままだ。また動きがあり次第お伝えしたい。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

新田 龍(にった・りょう):株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト。
早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。首都圏各大学でもキャリア正課講座を担当。