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【小説】巨大新聞社幹部の不倫報道も不発に…

巨大新聞2社経営陣追放計画は空振りか!? 不倫暴露記事に対して「名誉毀損」で対抗

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「関係ないです。訴訟を起こすことを考えると、記事を載せた方がいいですから」
「そうか。それなら、後で、原稿を交換しないか。調整した方がいいだろう」
「そうですね。そうしましょう」
「じゃ、夕方に原稿をメールで交換しようや」
「わかりました。本件はこれでいいですね。一つ、北川さんに聞いておきたいことがあったんですよ。合併の方はどうなるんですか」

 小山が少し上目使いの顔つきで、北川をみた。

「松野からは『取りあえず棚上げだが、新媒体の構想は詰めろ』と言われているだけさ」

 北川は、松野が合併はご破算にする気だ、と知っていたが、あえて言わなかった。

「村尾と同じですね。それなら、新媒体の方もぼちぼちやればいいですよね。…」

 北川が頷くのを見て、小山も納得した。

×××

 大都、日亜両紙の5月31日付朝刊には『深層キャッチ』6月13日号が掲載した写真と記事に対し、文書で「記事の内容はすべて事実無根で、2週間以内の謝罪を求め、それに応じない場合は法的措置も辞さない」という趣旨の記事があった。

 記事が載ったのは見開き社会面の右側のページ、第2社会面だった。扱いも紙面の一番下のベタ記事だったが、見出しはゴシック活字で読者の目を引くように作られていた。その中身は30日朝、北川が松野に示した原稿とほとんど同じだった。違っていたのは謝罪記事の掲載期限だけだった。北川の原稿では「1週間以内」だったが、「2週間以内」に変更になっていた。両紙で平仄を合わせるため小山と調整した結果だった。

×××

 日本ジャーナリズム研究所首席研究員の深井宣光は30日から2週間、資料室に毎日立ち寄った。新聞を取っていない深井が『深層キャッチ』の報道への両紙の反応を知るにはそれが手っ取り早かった。

 大地震以来、深井は資料室に週3日くらいしか顔を見せていなかった。その深井が皆勤すると、受付の開高美舞や研究員の伊苅直丈が不審に思う恐れがあった。

 だから、この2週間、深井は資料室に立ち寄っても出勤の痕跡を残さない日も作った。昼休みで二人がいない時を見計らい、ほんの30分ほどで、新聞各紙の朝刊で週刊誌などの広告や、大都、日亜両紙の社会面をざっと眺め、早々に引き揚げた。

 幸い、痕跡を残さない日に資料室で2人に出くわすことはなく、不審に思われることはなかった。だが、その苦労は徒労だった。別の週刊誌が関連した記事を載せることもなかったし、両紙も31日付朝刊に謝罪要求の記事を載せただけで、音沙汰なしだった。

 当然のことだが、仕掛け人、ジャナ研会長の太郎丸嘉一が深井に電話してくることなど、ありえなかった。もちろん、同僚の吉須晃人と資料室で出会うことはなかったし、連絡もなかった。深井の方から太郎丸と吉須に連絡することはその気になれば可能だったが、そういう気にはならなかった。

 本心かどうかはともかく、太郎丸は『深層キャッチ』にスクープさせれば、松野と村尾を退陣に追い込めると自信満々だった。だが、新聞各紙の広告などを見る限り、思惑通りになっているとはとても思えなかった。端から駄目だと主張していた吉須は「ほれ見たことか」という気持ちだろうと想像できたが、そんなことを誇らしげにするような男ではなかった。それでも、一縷の望みを抱いていた深井は吉須とも連絡を取る気になれなかった。

BusinessJournal編集部

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