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事実婚に形式婚と同様の法的地位を認めない限り、少子化の進行は止められない理由

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●経済的メリットはあまりない?

 では次に、結婚による経済的なメリットについて考えてみたいと思います。

 経済的といっても、結婚による家具や電気製品の共有、食事代の頭数当たりの節約、という観点ではなく、あくまで制度としてのメリットです。

 いろいろ計算してみた結果の一例を以下に示します(計算結果は、HPにおいて公開しています) 。

事実婚に形式婚と同様の法的地位を認めない限り、少子化の進行は止められない理由の画像3

 結婚して配偶者控除を受けると、パートナーに収入がない(専業主婦/主夫)、または扶養内でのパート等(但し、被扶養者の年収103万円以下)としますと、少しだけ儲かった感じを得ることができるようです。ほかにも、被扶養者の年収141万円までは、段階的に控除額が減っていく配偶者特別控除という制度があります。

 正直、結婚による経済的メリットは少ないように思えます。離婚訴訟を起こした場合、相手に慰謝料の請求をすることができますが、これはメリットではないでしょう。

●結婚は国家維持の基盤?

 今回の内容をまとめます。

・結婚(形式婚)は、その後に発生するであろう面倒な金銭的トラブルを、法律的に(かつ暴力的に)解決する手段を提供してくれます。

 また、自分のパートナーや子どもの法律的な地位も、自動的に発生させてくれます。比して事実婚は、これらを全部「自力」で行わなければならず、恐ろしく面倒な作業が必要となります。

・法は、「結婚の門戸は広く解放し、離婚の門戸は狭く限定している」という、ゴキブリホイホイ【編註:アース製薬株式会社の登録商標(第1252948号)】のようなシステムを採用しているようにも見えます。

 それは結婚が、公益面においては、国家を維持させる基盤であり、そして国民がこの「結婚というシステム」に全員参加し、途中で離脱しないことを期待されているからとも考えられ、また、私益面においては、参加してみたものの、不幸になってしまった人を救済するためとも考えられます。

事実婚に形式婚と同様の法的地位を認めない限り、少子化の進行は止められない理由の画像4

 では、最後に考察を行います。

 現行の日本の法律(民法)が、結婚をベースとして、その上に出産・育児というイベントを想定してきたことは明らかです。

 しかし、今や結婚自体が選択されない時代になっています。(参考:当サイト記事『“結婚”未来予測~増え続ける生涯未婚率、今年生まれる子どもの半分は結婚を選択しない?』)

 増え続ける生涯未婚率に対して、「事実婚での出産」に対する社会的な合意形成こそが、少子化の切り札とも思えます。

 しかし、その一方で出産を現実問題として考えた場合、結婚(形式婚)は最高にして最良の選択です。法律が面倒ごと(遺産、法律的地位、離婚、その他)のほとんどを請け負ってくれるからです。

 完全なデッドロック【編註:行き詰まった状態】です。

 今回、私はこの解決方法を思いつくことができませんでした。

 しかし、事実婚に形式婚と同程度の法的地位を認めるような、法律(民法)の大改正でも行わない限り、このデッドロックは解消されることなく、少子化の問題は、まだまだ続いていくように思えます。
(文=江端智一)

※なお、図、表、グラフを含んだ完全版は、こちら(http://biz-journal.jp/2014/04/post_4667.html)から、ご覧いただけます。

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(http://www.kobore.net/kekkon.html)へお寄せください。

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