NEW

第一三共、なぜ大型海外M&Aで巨額損失の誤算?遠因の社内対立に拍車の懸念も

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第一三共本社(「Wikipedia」より/ITA-ATU)
 ここ数年の国内企業による海外M&A案件として最悪の事例といわれるのが、国内製薬3位の第一三共によるインドの後発医薬品メーカー、ランバクシー・ラボラトリーズの買収だ。

 4月、第一三共は、ついにランバクシーの全株売却を発表。具体的には、第一三共はインド第2位の後発医薬品会社、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズにランバクシーの全株を譲渡し、代わりにサン・ファーマの株式9%を受け取る。年内に株式の交換を終える予定だ。

 第一三共によるとランバクシーの買収額が4900億円(08年当時の為替レート)だったのに対し、取得するサン・ファーマ株9%の価値は2100億円。第一三共は単純計算で2800億円を失うことになる。

 第一三共は後発薬事業を大幅に縮小する。ランバクシーを通じて進める予定だった世界市場での後発薬事業の拡大戦略は挫折した。ちなみに第一三共のサン・ファーマへの出資比率は9%にとどまるため、第一三共の連結対象会社ではない。

 第一三共はランバクシーの工場の品質問題で、最大市場の米国に輸出できなくなっていた。インド・パンジャブ州にある、医薬品のもとになる原薬を生産しているアンサ工場が今年1月、米食品医薬品局(FDA)から禁輸措置を受けた。第一三共は、禁輸措置となった原因を明らかにしていない。ランバクシーは08年にもインドのパオンタサヒブ、デワスの2工場がFDAから問題があると指摘され、さらに13年には最新鋭のモハリ工場も禁輸措置を受け、米国への後発薬の輸出ができなくなっていた。

●相次ぐ米国への輸入禁止措置

 第一三共の海外M&Aは、なぜ失敗したのか。

 第一三共はランバクシーの買収で、いきなり地獄を見た。08年6月、ランバクシーの子会社化を発表し、同年8月からTOB(株式公開買い付け)を実施。ランバクシーの株式の63.4%を4900億円で取得した。

 ところが思わぬ事態が発生した。TOB期間中の08年9月に米国のFDAがランバクシーの前出の2工場で抗生物質の取り扱いや製造器具の洗浄状況、生産管理、品質管理などに関する記録の保存について問題が改善されていないとして、30種以上の医薬品の米国への輸入を禁止する措置を取った。

 売上高の3割を占める米国市場を一時的に失ったことで、ランバクシーの株価は08年12月末に買収価格から66%も大暴落した。この結果、第一三共に3595億円の評価損が発生し、09年3月期連結決算で巨額の特別損失を計上。2154億円の最終赤字に転落した。

 ランバクシーの買収発表の直後、当時社長だった庄田氏は「先進国を中心とした新薬開発に軸足を置いてきた海外戦略を修正し、新興国市場への進出や安価な後発医薬品も提供する『複眼経営』に乗り出す」方針を打ち出した。ランバクシーは特許が切れたジェネリック(後発医薬品)メーカーで49カ国に拠点を持ち、13年12月期の売上高は1060億ルピー(約1833億円)。従業員は約1万4600人で、インド国内に10工場があるほか、米国にも工場を持つ。