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江川紹子の「事件ウオッチ」第2回

集団的自衛権、“不祥事”裁判を容認・根拠とする危険な安倍政権~日米の密談が生んだ判決

文=江川紹子/ジャーナリスト
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●「伊達判決」を米大使の前で批判した最高裁長官

集団的自衛権、“不祥事”裁判を容認・根拠とする危険な安倍政権~日米の密談が生んだ判決の画像2裁判の内容について、米側に密かに情報提供していた田中耕太郎最高裁長官(「Wikipedia」より)

 最高裁の判決には、判決として決まった主文と理由のほかに、裁判官の個人的な意見も書き加えられる。この最高裁判決では、10人の裁判官が個人的意見を披瀝している。

 その中で、当時最高裁長官だった田中耕太郎裁判長は、「事案は刑事特別法によって立ち入りを禁止されている施設内に、被告人等が正当の理由なく立ち入ったということだけ」であると強調している。米軍駐留が違憲であろうと、裁判所は基地に許可なく立ち入った事実が刑特法違反に該当するかどうかの判断をすればいいのであって、「原判決(伊達判決)は本件の解決に不必要な問題にまで遡り、論議を無用に紛糾せしめるにいたった」と述べている。「まったくよけいなことをしてくれた」と言わんばかりだ。

 近年、米国の公文書解禁によって、この事件に関し、在日米大使館が本国宛てに送った秘密電報の内容が明らかになった。それによると、田中長官は、ダグラス・マッカーサー2世・米大使と数回にわたって「内密の話し合い」を行った。この席で、田中長官が審理の日程、判決期日の予定、さらには一審判決破棄の見通しなどを米側に伝えた。田中長官は、伊達判決の憲法判断は「まったく間違っている」と米大使の前で批判もしている。

 米政府を代表する大使は、この裁判の当事者、もしくは準当事者である。そこに裁判長が密かに接触し、情報提供していただけでも、判決の公正性は疑われる。ましてや、それを日本の司法の最高権威である最高裁のトップが行っていた。司法の政治的中立性も主権国家としての尊厳も、かなぐり捨てたに等しい行為だ。米側と密談をしていたからには、日本国の政府ともなんらかの意思疎通があったと考えるのが自然だろう。日本の司法の信頼性が大きく損なわれる、大不祥事である。そんな判決をありがたく引っ張り出してきた高村正彦・自民党副総裁や、それに乗った安倍首相の見識を疑わざるを得ない。

 安保条約改定をめぐっては、大規模な反対運動が巻き起こり、デモ隊が国会に突入する事態も起きた。そんな騒然とした中、最高裁がこの判決を出した1カ月後の60年1月19日、米ホワイトハウスにて新安保条約が調印された。署名したのは、日本側が岸信介首相、米側がアイゼンハワー大統領。安倍首相は、祖父の政治判断にお墨付きを与えてくれた判決を、今度は自分の守り札にしようということなのだろうか。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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