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日産・ルノー連合、15年目の業務提携でルノー支援色鮮明?利益なき台数追求路線も転換か

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 明けて今年2月10日に発表された14年3月期第3四半期(13年4-12月)連結決算発表では、営業利益が前年同期比9.5%増の3006億円、最終利益が18.4%増の2740億円と業績好調だったにもかかわらず、田川丈二常務執行役員は会見後の非公式の場で、取り囲んだ記者団に「シェアと利益率を共に8%達成するのは難しい。シェアは努力目標だが、利益率はコミットメントだ」と語り、パワー88修正の可能性を初めて示唆した。

 パワー88の推進を公言するゴーン社長との「意見対立」と誤解されかねない見解を、なぜ田川常務が漏らしたのか。それは「パワー88と現実の乖離が誰の目にも明らかになってきたから」と、前出の関係筋は次のように説明する。

日産はパワー88で、14年度までに先進国事業の収益性を高め、14年度以降はその利益を新興国の販売競争に投入するという2段階作戦で『ダブル8%獲得』のシナリオを描いていた。そのシナリオが、前段階の米国市場で狂った。米国市場に投入した看板車種の『アルティマ』と『セントラ』が計画通り売れないからだ。同社は『リコール発生や生産面での混乱が原因』と釈明しているが、本当の原因は商品競争力にあった」

 つまり、アルティマもセントラも、先進国と新興国の両方で売れる「世界戦略車」として設計した結果、新興国向け色の濃い設計になってしまったのだ。新興国のユーザは加速、高速安定性、ブレーキングなどの走行性能と乗り心地より、価格を重視する。一方、先進国のユーザは逆の傾向があり、これが米国市場に投入した看板車種が計画通り売れない理由だとみられている。

 加えて、コミットメント経営による販売目標重視が、営業利益率の低下を招いた。米国では魅力の低い車をインセンティブ(販売奨励金)頼みで販売し、目標達成の辻褄合わせをしようとした結果、「利益なき販売台数追求」となり、営業利益率が低下した。

 また、先進国共通の苦戦要因として、電気自動車(EV)へののめり込みが挙げられる。ハイブリッド車(HV)を持たない同社は、環境対応車としてEVに注力している。ところが、日本国内でも欧米でも環境対応車として順調に売れているのはHVだ。EVの実需は今のところ低く、「同社の独りよがりな思惑が空回りしている」との見方もある。

●統合は中計修正への布石か

 ゴーン社長をよく知る証券アナリストは、前述した田川常務の発言について、「ゴーン社長の暗黙の了解なくして、あの発言はあり得ない」と次のように分析する。

「ゴーン氏は強気の公式発言の裏で、パワー88のシナリオ狂いもちゃんと認識している。そして、苦肉の修正策として打ち上げたのが今回の業務統合。田川常務が非公式に漏らした『ダブル8%達成困難』の見解は、その地ならしのようなもの」

 したがって、業務統合が日産・ルノー連合の筋書き通り進めば、パワー88の目標は未達成確実ながらも「かなり高いレベルで目標に近付けられる」(証券アナリスト)とみられている。

 だが問題は、稼働率が著しく低下しているルノーの生産拠点だ。「生産の最適化」が今回の業務統合の表向きの理由だが、「実質的には日産によるルノー支援」との見方が市場での一致した見方だ。

 これについて日産関係者は「統合の相乗効果で車1台当たりの生産コストを圧縮できれば、その成果は生産台数に応じて両社に配分される仕組みだ。ルノー支援になるとの心配は杞憂だ」と否定するが、前出の関係筋は「苦境のルノー立て直しに、日産の経営資源が割かれる可能性は払拭できない」と警鐘を鳴らす。

 業務統合はパワー88の軌道修正に働くのか、ルノー支援に働くのか、日産周辺の憶測は増すばかりだ。
(文=福井晋/フリーライター)

BusinessJournal編集部

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