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「ドラッグストア」の強みを探る

コンビニの隠れた強敵、百貨店業界に肉薄…ドラッグストアの知られざるモデルと実態

高井尚之/経済ジャーナリスト

 ドラッグストアで取り扱う医薬品には、医師が処方せんに基づいて販売する医療用医薬品と、OTCと呼ばれる一般用医薬品(大衆薬・市販薬)がある。病院や医院の近くにある店舗では前者を多く扱い、スーパーのように広い売場面積を持ち、食料品や日用品、化粧品も扱う大規模店では後者の販売が多い。

 前者の医療用医薬品や、病状改善効果が期待できる半面、副作用のリスクも強い第一類医薬品は薬剤師しか販売できないため、一般のスーパーや百円均一ショップ、コンビニなどではこれらを取り扱えない。

 反対にドラッグストアは、地域の小売店として薬以外にも多彩な商材を取り揃えて低価格で販売している。

●競争激化するドラッグストア業界

 その昔、医薬品は製薬会社が価格決定権を握る時代が続いた。そうした“メーカー設定小売価格”と戦ったのが、大手スーパーマーケットチェーン・ダイエーの前身、サカエ薬品で、1957年に大阪・千林駅前に開業したダイエー1号店は「主婦の店・ダイエー薬局」という店名だった。

 また、大手化粧品メーカーの契約販売店が隆盛だった時代には、薬局で化粧品は取り扱えなかった。今となっては、そうした呪縛も解けて化粧品の取り扱い品目も広がり、手頃な価格が利用者に支持され、ダイエーが掲げた「主婦の店」のDNAは、各地のドラッグストアにも受け継がれている。

「自宅の近所にも何店かあるが、ドラッグストアは大手メーカーの缶ビールが安い。最近はドラッグストアでしか缶ビールを買わなくなった」(都内在住の男性会社員)

 この男性のように、ドラッグストアの魅力に気づいた人は、好んで利用する傾向にある。化粧品やボディケア用品など、ドラッグストアの商品全般を見て回る女性とは違い、男性は「ドラッグストアに入ったけど、食品しか買わなかった」などという例も多い。

 こうして取り扱い品目を広げる一方、低価格でも消費者に訴求するドラッグストア業界は、今や年間売上高3000億円を超える企業が7社もある。

 最大手はマツキヨことマツモトキヨシ(13年の年間売上高4563億円。本社は千葉県松戸市)だが、それをサンドラッグ(同4074億円。東京都府中市)が追い、スギ(同3436億円。愛知県安城市)、ツルハ(同3430億円。札幌市東区)、ココカラファイン(同3358億円。横浜市港北区)、ウエルシア(同3343億円。東京都千代田区)、コスモス薬品(同3293億円。福岡市博多区)が団子状態で続く。次回の業績発表次第で順位が変動するような僅差だ。

 これらのグループ企業の中には、有力チェーン同士が合併したり、あるチェーン店が大手グループの傘下に入って拡大したりと業界再編が進み、社名と店名が一致しない例も多い。例えば「セイジョー」や「セガミ」はココカラファインの主力店舗であり、「くすりの福太郎」はツルハグループ、「ぱぱす」はマツモトキヨシグループだ。

 地域によって企業の勢力図も変わる。ツルハは北海道・東北、マツキヨは関東や甲信越・北陸、スギは東海や関西、コスモス薬品は本拠地の九州・沖縄以外に、中国・四国地方で強い地盤がある。

 このほか、カワチ薬品(13年の年間売上高2300億円台。本社は栃木県小山市)は北関東地方で、クスリのアオキ(同930億円台。石川県白山市)は北陸地方で大きな存在感を示す。

 競争がさらに激化すれば、それぞれの店舗で魅力を消費者に訴えるために独自色を出すなど、さらなる企業努力を続けることになる。ドラッグストアは、消費税も上がった今、賢く買い物をしたい消費者にとってありがたい存在だ。

 これまで、ドラッグストアに入ることをためらったり、あまり利用していなかった人(特に男性)も、一度、気になる店をのぞいてみてはいかがだろうか。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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