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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第74回

腐敗する巨大新聞社の社長追放計画、次の狙いは二股不倫の一方からの激白?

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「Thinkstock」より
【前回までのあらすじ】
 業界最大手の大都新聞社の深井宣光は、特別背任事件をスクープ、報道協会賞を受賞したが、堕落しきった経営陣から“追い出し部屋”ならぬ“座敷牢”に左遷され、飼い殺し状態のまま定年を迎えた。今は嘱託として、日本報道協会傘下の日本ジャーナリズム研究所(ジャナ研)で平凡な日常を送っていたが、もう一人の首席研究員、吉須晃人とともに、新聞業界のドン・太郎丸嘉一から呼び出され、大都、日亜両新聞社の社長を追放する算段を打ち明けられる。東日本大震災から2カ月を経て、太郎丸は計画を実行に移したが、狙い通りには進まない状況にあった。

 「すげの」の若女将が三人分の鰻重、肝吸い、香の物を盆に載せ、2階に運んできた。そして、卓袱台に重箱やお椀を並べ、黙って引き下がった。

「吉須(晃人)さん、今日はこの辺りで鰻重を食べましょう。どうせ、また(太郎丸嘉一)会長と会う機会はあるんですから。あとはその時にしましょう」

 日本ジャーナリズム研究所首席研究員の深井宣光がそう言って鰻重を食べ始めた。しかし、半分ほど食べ終えたところで、深井自身が切り出した。舌の根も乾かぬうち、というのはこういうことを言うのだろう。

「僕は吉須さんと違う見方です。大都も日亜も裁判は起こさない可能性だって結構あると思います。確かに訴訟になれば、向こうが勝つんでしょうが、案件が不倫ですからね。公の場で、不倫があるかないか争うんですよ。恰好悪くてやってられないです」
「普通なら、君の言う通りだが、松野(弥介・大都社長)や村尾(倫郎・日亜社長)は相当、面の皮が厚いからな。常識は通用しない…」

 吉須が異論をさし挟もうとすると、深井が遮った。

「裁判を起こすかどうか、いま議論しても仕方ないです。僕が会長に聞きたいのはなぜ『深層キャッチ』は松野と村尾、それに二人の愛人に直撃しなかったんですか。直撃していれば、もっと訴訟にしにくくなったはずです。その辺はどうなんですか」

 鰻重を食べていた太郎丸は箸を止めた。そして、肝吸いを一口飲んで、苦虫を噛むつぶしたような顔をした。

「深井君、お主の言っちょる通りじゃ。じゃが、写真はわしの提供じゃったうえ、『深層キャッチ』側もまだ大地震関連の取材で大わらわな状況じゃろ。直撃しよるほど、人手を割けんかったんじゃのう。やむを得んじゃろ。次回は必ず直撃してくれ、と頼んじょる」
「ああ、そういうことですか。もう一つ、今度やる時は、村尾については杉田(玲子)さんとの関係を暴くつもりのようですが、これはどんな手を考えているんですか」
「ふむ。杉田君はわしの秘書じゃ。日ごろの接触で、芯の強い女のような気がしよるんじゃ。今度のスクープで村尾が何もせんということはないじゃろ。腐れ縁の(芳岡)由利菜とはよう切れんぞ。じゃが、杉田君との関係は切りよるかもしれん。女誑しのことじゃから、彼女の琴線に触れるような言動を吐くかもしれん。…」
「それは『琴線に触れる』じゃなくて、『気に障る』じゃないですか」

 吉須が遮ったが、太郎丸はむっとして続けた。