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ソフトバンク、なぜ「成長限界説」広がる?巨額買収の米社不振と、財務体質の悪化

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 これに危機感を持ったスプリントは携帯電話事業に資源を集中するため、04年に固定電話事業を売却する一方で、ネクステル・コミュニケーションズを買収。現在のスプリントになったが、この買収がその後の同社を苦しめる結果になった。

 買収でスプリントはトップ2社と加入者数の差を縮めたが、スプリントはCDMA、ネクステルはiDENと通信方式が異なっていたため、買収による相乗効果を発揮できなかった。

 そこでスプリントはWiMAX(超高速インターネット通信)サービス事業者のクリアワイヤと提携し、WiMAXサービスに参入した。それで事業がさらに混乱した。音声通信サービスではCDMAとiDEN、データ通信サービスではCDMA2000とWiMAXの計4方式のサービス運用をしなければならなくなったからだ。

●広がる大手2社との差

 同社はスマホ事業でも苦しんだ。

 07年に登場したアップルのiPhoneは約4年間、AT&Tモビリティ(以下、AT&T)が独占販売した。これにベライゾンはグーグルのアンドロイドで対抗、スマホ競争が激化した。このため、両社はスプリントの買収による通信サービスに不満を持っていた旧ネクステルユーザを狙い撃ちする「くら替え作戦」を全米で展開、スプリントから旧ネクステルユーザが大量に流出した。これで再びトップ2社とスプリントの加入者数の差が広がった。

 スプリントは現行の苦しい3G事業に加え、11年頃から本格化した4G(第4世代携帯電話)整備競争でも苦戦している。同社は11年、通信ベンチャーのライトスクエアードとLTE(次世代高速携帯通信)サービスの再販契約を締結、さらにクリアワイヤともLTEサービス再販契約を締結した。

 ところが、ライトスクエアードはGPS(全地球測位システム)端末との電波干渉問題を解決できず、無線免許の取得に失敗し破綻した。頼みの綱のクリアワイヤも資金調達難でLTE整備の遅れが表面化している。

 4G整備競争で先行するベライゾンは13年末にはLTEサービス網の全米展開を完了、同社は14年以降、AT&Tとスプリントに4G競争を仕掛けてくると予想されている。AT&Tも豊富な資金力を背景にLTEサービス網の整備を続けており、15年中に全米展開完了の見込みといわれている。それに比べ、スプリントの全米展開は17年以降と見られており、着々と整備を進める大手2社との周回遅れが明らかになっている。

 スプリントは「4G戦争」の前哨戦でも敗れ、大手の地位確保が危うくなっている。米国通信業界の動向に精通する業界関係者は、「本来なら買収対象になっていたが、独占禁止法の関係からベライゾンやAT&Tは触手を伸ばせないでいた。Tモバイルの親会社のドイツテレコムも、投資家から米国市場撤退圧力を受けており、スプリント買収どころの話ではない。そんなところへ日本からソフトバンクがスプリント買収に乗り出してきたので、米国中が大騒ぎになった」という。

 スプリントの買収成功で、ソフトバンクは念願の米国携帯電話市場進出を果たしたものの、同社の前に立ちはだかる大手2社の壁は厚い。

 昨年7月のスプリント買収直後、同社はソフトバンクのビジネスモデルに倣い、音声・データ通信が使い放題のプランを一気に30%値下げした。「新生スプリント」をアピールするのが狙いで、消費者の好評を得たが、他の大手もすかさず追随したため、同社は大きな効果を得ることができなかった。さらに、「同社は通話品質が悪い」との以前の悪評が残ったままで、同社は13年第2四半期と第3四半期の2期連続で契約件数を純減させ、大手4社の中で独り負けを続けている。米国系証券のアナリストは「ソフトバンクの買収で社内が混乱している今が加入者を奪うチャンスと、スプリントは大手2社の草刈り場になっている」と指摘する。

●財務体質悪化の懸念も

 一方、スプリントを買収したソフトバンクは、財務体質の悪化にさらされている。スプリントの12年12月末の有利子負債は243億ドル。最終損益は6期連続の赤字が続いている。加えて、負債が40億ドルはあるといわれるスプリント子会社のクリアワイヤも連結対象になったため、ソフトバンクは諸々合わせ一挙に335億ドルの新規負債を抱えたといわれている。

BusinessJournal編集部

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