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碓井広義「ひとことでは言えない」(5月12日)

刑事モノや池井戸モノが乱立…春の連ドラ、今から間に合う、大人が見てもいいドラマは?

文=碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

 ただ、ストーリー展開としては、話が複雑すぎるかもしれない。テロ組織vs.警察、刑事部vs.公安部、西島vs.香川、テロ組織vs.テロリストなどいくつもの対立軸があり、重層的に絡み合うためだ。

 もともと逢坂剛の原作小説自体が、決して読みやすいものではない。むしろ読者がその迷路のような“見通しの悪さ”を楽しむタイプの作品なのだ。

 小説の場合は、必要なら前に戻って読み返せばいい。筋立てや人間関係の確認もできる。しかし、テレビドラマはそれができず、前にしか進めない。途中でついていけなくなれば、リタイヤする視聴者も出てくるだろう。これは、視聴者のせいではない。脚本が、広げた風呂敷を十分に整理できていないのだ。

 それでも、このドラマには、見ないではいられない魅力がある。人間の善と悪、表と裏、日常では隠された業(ごう)や性(さが)のようなものまでが描かれているからだ。西島秀俊の肉体美を披露するためか、やたらと裸になるシーンが多い演出は困りものだが、大人が見てもいい1本であることは確かだ。

 そして、同じ木曜夜9時枠で、同じ刑事ドラマという真っ向勝負となったのが、小栗旬主演の『BORDER』(テレビ朝日系)である。実は放送開始前、「死者と対話できる特殊能力をもつ刑事」のドラマと聞いて、やや引いていた。

 しかし、事件の被害者である死者たちが、結果的に主人公を通じてその無念を晴らすというスタイルは、意外や結構快感だったりする。いわば「突拍子もない話」であるこのドラマを成立させているのは、原案だけでなく、脚本も手掛ける直木賞作家・金城一紀のお手柄だろう。一話完結形式でもあり、『MOZU』のテイストが自分に合わないと思う人にはお薦めだ。

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

碓井広義/上智大学文学部新聞学科教授

1955(昭和30)年、長野県生まれ。メディア文化評論家。2020(令和2)年3月まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。慶應義塾大学法学部政治学科卒。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年、テレビマンユニオンに参加、以後20年間ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に『人間ドキュメント 夏目雅子物語』など。著書に『テレビの教科書』、『ドラマへの遺言』(倉本聰との共著)など、編著に『倉本聰の言葉――ドラマの中の名言』がある。

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