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財務省、初の長期財政推計の欺瞞性 辻褄合わない前提条件、消費増税への地ならし

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財務省(「Wikipedia」より/っ)
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

 4月28日、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会が、「我が国の財政に関する長期推計」を公表した(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia260428/08.pdf)。

 マスコミは、こうした資料モノについて官公庁から言われるがままに記事を書く傾向が強いが、今回の試算に関しても「2060年度 債務残高は1京円にも」などと報じられ、財政危機が迫り増税が避けられないというトーンになっている。

 今回の試算は、小泉政権時代に財務省が出してきた試算と基本的には同じものだ。小泉政権は「消費税増税をしない」と言い切ったので、増税をもくろむ財務省が財政危機を煽ったのだ。当時、竹中平蔵経済財政担当大臣の補佐官を務めていた筆者は、財務省の試算の問題点を暴いてくれと竹中氏から頼まれたので、よく覚えている。ちなみにその内容は、06年3月16日に開催された経済財政諮問会議における竹中氏提出資料(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2006/0316/item3.pdf)に書いてある。

 今回の試算は、欧州委員会の財政試算に倣ったというが、財務省にかなり都合良く前提条件を書き直している。

 例えば、試算期間について財政審は60年度までの50年程度としているが、欧州委員会では30年度までの20年程度。試算期間を変えることで、より財政危機が演出できる。

 次に、財務省のインフレ率の前提もおかしい。欧州では、事実上、インフレ目標2%となっているので前提インフレ率も2%でよいが、なぜインフレ目標2%の日本の前提インフレ率が1%なのか。辻褄があわない。

 さらに、財務省の名目成長率2%は低い。その一方で、金利は高めに3.7%と設定し、名目成長率より1.7%も高い。一方、欧州委員会では、金利は4.5%、名目成長率3.6%で、金利は名目成長率より0.9%しか高くない。このカラクリがばれないように、財務省の資料では、欧州委員会予測の紹介のところで、金利は長期金利5.1%しか書かれておらず、金利が名目成長率より1.5%も高いように誤解させる表現になっている。財務省は、一応、言い訳のために、形ばかりの実質成長率2%(名目成長率3%)前提でも試算しているが、メインに据えてある試算の前提条件があまりに違うので、増税に向けての「地ならし」として「答えありき」の内容になっているとみられる。

 最近、科学論文でデータねつ造が話題になっているが、霞が関の資料もなかなか手が込んだつくりになっているものだ。恣意的な前提条件に基づく「答えありき」では、データ改ざん・ねつ造と変わりはない。

 科学論文では、データの再現性がポイントである。財務省の資料は単に答えだけしか書いていない。財務省は税金で運営されているわけなので、国民は資料に書かれたデータを再現できるように、計算モデル式と基礎データの公開を請求できるはずだ。誰か、情報公開請求して、財務省資料の欺瞞性を徹底的に調べてみてはどうか。