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吉田潮「だからテレビはやめられない」(5月17日)

今期乱立の警察ドラマ、2大傑作と陰のイケてる2作?練られた構図、SM風の骨太演出…

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『TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部~』公式サイト(「テレビ朝日 HP」より)

主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。

 警察モノだらけの今期(4~6月期)ドラマ界。俳優の実力、洗練された映像、練られた構図という点では、西島秀俊&香川照之主演の『MOZU Season1 ~百舌の叫ぶ夜~』(TBS系)と、小栗旬主演の『BORDER』(テレビ朝日系)がダントツに面白い。もったいないことに、この2作品は同じ曜日の同じ時間帯に放映されているため、視聴率の分捕り合いになってしまっているようだ。両作品ともにクオリティの高さには甲乙つけがたく、木曜日の夜が本当に楽しみである。

 この2大傑作の陰にうっかり隠れてしまったが、実は意外とイケているほかの警察モノについても触れておこう(親子で刑事とか、デブの刑事とか、アニメっぽいちゃんちゃらおかしい科捜研モドキとか、イケてないドラマはこの際、ガン無視する)。

 主人公が頭脳明晰のキレ者だが、孤立無援で味方も仲間もいない、組織内の鼻つまみ者という設定の『TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部~』(テレビ朝日系)。主演は小澤征悦。小澤は警視庁の管理官で、合理的な捜査を強要。高圧的に「あなたたちはコマです」と言い切り、無駄な捜査会議は一刀両断。田辺誠一率いる警視庁の捜査班からも、所轄署のベテランいぶし銀刑事たちからも煙たがられ嫌われる。警視庁と所轄署のいがみあいもあり、捜査本部内は毎回一触即発の不穏な空気に。

 初めは「おいおい、事件が起きるたびに警察内部で大ゲンカかよ、仲よくやってくれよ」と辟易したのだが、観ているうちに引き込まれてしまった。結果的には、小澤ひとりが「必要悪」を演じて、ほかが一丸となって事件解決に向かう。主役が組織内で必要悪になる、という構図は悪くない。小澤自体はまったく変わらず、周囲の人間が「刑事の自負」や「組織論の不毛さ」に気づかされていく。所轄署のごっついベテラン刑事たち(ここがゲスト出演になるのだが、古谷一行やダンカン、矢島健一などクセの強い面々)が化学変化を起こし、氷解していく様子も一興である。ノーブルな顔だち(少々濃いめ)で無表情の小澤が今後どう変化していくのか見守りたい。

●ギャグ、スパイス、エロスが満載

 もうひとつ。伊原剛志主演の『トクボウ~警察庁特殊防犯課』(読売テレビ系)は、ややライトテイストな警察モノである。容疑者を麻縄で縛り上げるなど、一瞬、おふざけ&SM風お色気ドラマに見えるのだが、否、意外と骨太だったりもする。伊原が演じる朝倉警視は捜査や逮捕をせず、「矯正執行」なるお仕置きで悪を制していく。法の下でしか動けない刑事たちと異なり、やりたい放題・言いたい放題。伊原のセリフには普通の刑事が決して口にはできない「正論」がちりばめられていたりもするのだ。

 伊原に振り回される所轄刑事の松下洸平も、ちょっとカワイイ。フリルつきエプロンをつけて卵料理をつくらされる松下と、松下の背後に立ち、耳元で囁く伊原のテンション低めなドSぶり。このふたりの何ともいえない主従関係は、ギャグであり、スパイスであり、エロスでもある。とはいえ、伊原も伊原で、上司でドSの警視正・安達祐実に虐げられるという構図だ。伊原の麻縄シーンにドキドキする特殊性癖の輩も少なくないはず。ただ単純な正義のヒーローではなく、常に「死にたい」とぼやく伊原のネガティブさも気になる。

『TEAM』も『トクボウ』も、みんな大好き「警察内部の内輪もめ」が描かれているのだが、微細な設定ひとつで風合いも変わるものだ。組織ぐるみの隠蔽や内部抗争に少々食傷気味な視聴者でも、「ほほう、そうきたか」と新鮮な気持ちで眺められると思う。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。