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第一三共、「複眼経営」6年目の誤算 巨額損失の子会社売却で海外&成長戦略が白紙に

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第一三共本社(「Wikipedia」より/ITA-ATU)
 医薬品大手の第一三共は4月7日、子会社でインドのジェネリック(後発医薬品)大手、ランバクシー・ラボラトリーズの実質的な売却を発表した。ランバクシーは同じインドのジェネリック大手、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズに、年末をメドに株式交換方式で吸収合併される。第一三共はランバクシーへ63.4%出資しているが、サンによるランバクシー吸収後はサン株を約9%保有する一株主になり、ランバクシーへの経営関与権はなくなる。

 第一三共は2008年のランバクシー買収直後から品質問題でつまずき、有効な解決策も打ち出せないまま、成長戦略の中核に位置付けた事業を手放すことになり、同社の成長戦略は振り出しに戻った。

「ランバクシー買収で、ジェネリックの事業モデルや新興国の事業展開ノウハウを学べた。今後の展開で、ランバクシー事業の損失は十分取り戻せると考えている」。4月7日の記者会見で、第一三共の中山譲治社長はそう釈明した。だが、買収半年後のランバクシー株急落(約66%)による評価損、ランバクシーの品質問題による米政府への和解金など、買収に関連して計上した損失額は累計約4500億円に上る。

 第一三共が約5000億円を投じてランバクシーを買収したのは、世界的に市場が成長しているジェネリック事業への参入に加え、自社の新薬事業をランバクシーの世界販売網に乗せて拡大するのが目的だった。これを庄田隆社長(当時)は、08年6月11日の買収発表の記者会見で、先進国での新薬に頼るビジネスは時代遅れであり、これからは「先進国と新興国」「新薬とジェネリック」の両方で攻める「複眼経営」が不可欠であり、ランバクシー買収はその具現策だと説明した。

 発表当時は株式市場でも、この複眼経営は好意的に評価された。その理由の1つ目は、グローバル市場におけるシェア拡大への期待。ランバクシー買収により、それまで21カ国だった第一三共の海外拠点は一挙に56カ国へ拡大。特に手薄だったブラジル、ロシアなどの新興国に足場を築いた。30年にはBRICs市場だけで08年の560億ドルから4200億ドルに成長する可能性があるとみられているが、この額は08年の国内市場と米国市場の合計額に相当する。
 
 2つ目の理由は、ジェネリック事業の拡大。医薬品大手は既存主力新薬が特許切れを迎える「2010年問題」に直面している。特許失効後は順次ジェネリックに切り替わるが、グループ内のジェネリックメーカーが特許失効薬をジェネリックとして販売すれば、収益源の流出を防げる。証券アナリストも「ジェネリックという新たな収益源を獲得した第一三共の成長力は一段と強まった。複眼経営は中長期的な成長戦略という点でも注目される」と述べるなど、複眼経営の成功を疑う声は皆無に等しかった。

●対米輸出禁止処分という誤算

 ところが、それからわずか3カ月後、事態は市場関係者の誰もが予測しなかった方向へ転換する。

 FDA(米国食品医薬品局)が、ランバクシーのインド国内2工場の品質がFDA基準に合致しないと、対米輸出禁止処分を下したのだった。これで売上高の約30%を占める米国市場が一時的に消失、ランバクシーの08年12月期決算は67億円の最終赤字に転落。12月末の同社株価は、買収価格の1株737ルピーから65.8%も暴落して252ルピーとなり、邦貨で3595億円の評価損が発生した。このため、第一三共は買収年度に3540億円もの「ランバクシーのれん代」を償却、05年の第一製薬と三共合併後初の最終赤字に転落した。