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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第78回<終>

腐敗が進む巨大新聞社、失われるジャーナリズム、堕落する社員、政府と癒着…

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≪さて、なぜそれが“成果”ということですよね。考えてみてください。日亜社内では二人の関係は公然の秘密のようなものです。それなのに、裁判で勝訴すれば、二人は不倫の関係でもなんでもない、とお墨付きをもらったことになるんです。由利菜は平然と出世の階段を上っていくことになるでしょうね。村尾らは由利菜を怒らせるわけにはいきませんから。≫

≪日亜社内は益々“白け”ムードが広がり、堕落のスピードは速まるでしょう。これも話しましたよね。あなたは覚えていないかもしれないけど…。どっちにしても、日亜には優秀な記者たちはもういないし、下も育っていません。その紙面がどんどん精彩を欠いていくのは自明のことで、部数も減り続けるでしょう。≫

≪もう一つ、まだ推測の域を出ませんが、太郎丸会長の意に反して、大都と日亜は再びよりを戻して、合併しますよ、きっと。これも僕は大歓迎なんです。僕の目には「日亜に比べれば、あなたの大都の方がまだまし」と映っていますが、朱に交われば赤くなりますからね。この意味で、会長の意に反しても、国民新聞にとっては、災い転じて福となす、といったところでしょうか。もっとも、悪貨は良貨を駆逐する、とも言います。福となすのは一時のことで、国民新聞の将来も保証できないでしょうが…≫

≪これだけ、説明すれば、完全にお分かり頂けたしょう。もっとも、あなたは非常に勘のいい記者ですから、3分の2くらいは“読み通り”だったのではないかと、推察します。いずれにせよ、今回の暴露作戦、迂遠なことですが、大新聞社を自壊に向かわせる第一歩になる、と、僕は期待しているんです。でも、これから先、二の矢、三の矢と打ち出せる自信はありません。それで、もう潮時かなと…。≫

≪そんなわけで、今月末でこの業界と完全に縁切りすることにしました。来月からは全く別世界で生きていますが、残りの人生があと数年なのか、10年なのか、20年なのか、知る由もありません。長くても30年前後でしょうが、それまでに大新聞社を抹殺することなどできないのはわかっています。≫

≪とにかく、この1世紀、日本の大新聞社は“言論機関”という錦の御旗をフルに活用、政府からの便宜供与を受け続ける一方、暴利をむさぼってきました。だから、10年や20年はどんなぼんくらが経営していてもびくともしないでしょう。しかし、残りの人生があまり短ければ別ですが、僕の生きている間にかつての大新聞社の地位と名声が完全に地に落ちるのは間違いないような気がします。僕はそれで十分なのです。≫

≪自分に続いてほしくて、僕は、あなたにこの手紙を書いているわけではありません。元々、ジャーナリストになりたくて新聞社に入ったわけではありません。新聞社くらいじゃなきゃサラリーマンとして勤まらない人間だと自己評価していたからです。太郎丸会長のような、ジャーナリズムに対する思いれもなければ、未練もありません。≫

≪もう、あなたに会うことはないでしょう。でも、この半年間、暴露作戦を巡り、会長、あなたと侃侃諤諤の議論をしたのはいい思い出です。ありがとう。そして、さようなら≫
×××

「今回の一件、すべてが吉須さんのシナリオ、あの怪文書を出したのも彼なのではないか」――。

 手紙を読み終えると、そんな思いが過ぎり、深井はベンチに座ったまま、ポケットに手を入れた。吉須に電話しようと思ったのだが、あきらめた。もう吉須が電話に出るはずもないからだ。そして、吉須の手紙の中身を反芻した。

BusinessJournal編集部

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