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闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第17回

芸能プロ社長、タレント脅迫裁判で慰謝料命令 「君は人生破滅。あらゆる手段使う」

文=佐々木奎一/ジャーナリスト
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「まじめに人生考えなきゃだめだよ。俺は人の上に二十何年間立ってきて、世の中動かしてきたくらいのつもりだから、むちゃくちゃプライドあるよ。その男を敵に回したら、どうなるかということを、考えたほうがいいよ。俺は法律とか裁判とか関係ないから」
「これだけプライド傷つけられたの、生まれて初めてだから。この期に及んで親とか弁護士とか出してきたら、君は完全に人生破滅すると思っていいよ」
「俺はあらゆる手段を使うよ。人生終わると思うよ。幸せはないよ」

 山本は、たまらず「具合悪いんで、帰っていいですか」と告げ、帰ろうとしたが、八木氏は、

「死ぬ気でちゃんと対話しようよ。死んだらしょうがないじゃん」
「具合悪いとか精神的になんだとか、言っている場合じゃないんだよ。親も心配して、それで死んだら、しょうがないじゃん。それだけのことしちゃったんだから」
「ホームから飛び降りたら、しょうがないじゃん。そんだけ悪いことしたんだから」

と、死を示唆するような言葉を用いて脅しを強めた。

 12年3月7日、再度話し合いの場を設け、山本は「契約を解除することに同意してください。解除に同意してもらえない場合、契約満期となる11月30日まで仕事をしますが、その後の更新はしません」と告げた。

 それに対し八木氏は、「君の人生ぐちゃぐちゃになるよ」と再度脅した。

 この面談後、山本は強い震えと嘔吐に襲われ、3日後、近所の精神科で受診したところ、医師に「事務所の社長の言動のせいで、『不安障害』になっています。これ以上、その社長と会うことは避け、仕事を休んで休養を取ることが必要です」と診断されたため、山本は八木氏に対し、今後は弁護士を通すよう伝え、直接の連絡を絶った。

●契約違反として提訴し、中傷ツイートを繰り返し

 こうして契約が切れた後の12年12月21日、八木氏は会社名義で、山本と保証人である山本の父親を相手取り、2000万円の賠償金の支払いを求め、東京地方裁判所に訴訟を起こした。

 また、この提訴の後、八木氏は自身の会社のツイッターで、

「ツイッターを削除し、“証拠隠滅”を図る“山本早織”。彼女の数々の業界批判や“ビッグ”発言に関係各所から『あいつは何様だ』『いつまで勘違いしているんだ』『ああいう輩を野放しにするな』等お怒りの言葉が寄せられる。“育ちの悲哀”とはいえ、彼女の“成れの果て”には“哀れみ”を禁じえない」
「業界を追われ訴えられた“山本早織”(略)彼女を憐れむ“お仲間”は三流芸人と売れなかった着エロタレントくらい」
「被告となった山本早織は(略)規範を守れない愚かな脱落者」
「業界の落ちこぼれ」

などと、山本を中傷する投稿を繰り返した。

 これらを受けて、山本は反訴した。反訴の請求内容は、不安障害に陥るに至った八木氏の不法行為による精神的苦痛、未払い報酬、弁護士費用、中傷ツイートによる名誉棄損などの代価として、計720万4582円を支払えというもの。

 審議が進み、13年12月18日、一審判決が下った。裁判所は、山本がタレント活動を続けられなくなった原因は、八木氏の言動によって精神的に追い詰められ、不安障害を罹患したことにあると認定し、未払い賃金120万円、慰謝料30万円などを含め、約200万円の支払いをバックアップ・プロモーションに命じた(東京地裁民事第49部の:飯淵健司裁判長)。

●控訴審も社長の不法行為を認定

 その後、八木氏は控訴したが、山本は控訴しなかった。もうかかわりたくない、早く裁判を終わらせたい、という心境と見受けられる。

佐々木奎一/ジャーナリスト

佐々木奎一/ジャーナリスト

「My News Japan」を中心に、「別冊宝島」や「SAPIO」「週刊ポスト」などで執筆するジャーナリスト。企業のパワハラや不当解雇などの労働問題を中心に、政治家の利権や原発問題に絡むメディアの問題なども取材をする。これまでに、「キユーピー」のパワハラ問題の追及や大企業の障害者雇用に関する問題提起、バンダイナムコの社員うつ病問題などを追及して話題となっている。

Twitter:@journalist_ssk

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