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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第24回

冤罪を免れるのは困難、中身を見ず和解を強要…裁判所の病理を元裁判官が告発

文=新田龍/ブラック企業アナリスト
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 本書の内容が「衝撃的」と世論から評価されるのであれば、それは裁判所の実態が世間に伝わっていなかったということですし、またこれまで疑問も持たれず、議論もなかったことは大きな問題だと思います。

 これまでの司法についての議論は、左翼系といわれる人々の意見が多く、思想的な偏りもあり、世論に広く問題提起をすることが難しかったのです。学者の分析などもありましたが、これは古い文献に基づいたものが多く、現状と乖離していたのではないかと思います。

 例えば、民事裁判の事件数が減少しているとか、裁判官の不祥事が増加しているとか、そういう特徴的な数字は報じられていても、それらをすべて統合して、どう意味付けるべきか、そのような考察が不十分であったと感じます。

 その考察をするには、裁判所の内部で長く勤務して、中枢の考え方や実務を知っている人間でないと難しいと思います。そのような考察を行うべきだと考えたのです。

●社会システムは変えられる

–本書で、一般の読者に広く伝えたいことはなんですか?

瀬木 今の世の中は、裁判所を含む社会のシステムを「どうしようもない、動かせないもの」と捉え、それを受け入れるか、無視するかの選択しかないと考えている人が多いように思います。

 しかし、司法を含めて、社会のシステムは「変えられる」ものです。「変えられない」という意識は、社会のあり方にも原因がありますが、国民全体に「世の中をどうしていきたいか」という問題意識が薄いこともまた一つの原因です。一人でも多くの人が、そういう意識を見直して、社会のシステムを変えてほしい。そのための民主主義国家なのです。

 社会のシステムに不満があるのに、それを受け入れてしまうというスタンスは非常に危険です。そうならないように積極的に調べ、自ら情報にアクセスして、どこにどのような問題があるのかを考えるようにしてほしい。そのために、私は自らの知る司法についての情報を、責任を持って公開したいと思います。

 司法の問題も、関心を持って取り組まなければ、明日は我が身に降りかかってくる可能性があるという事実を知ってほしいのです。現状では、警察や検察に目を付けられたら、刑事裁判で冤罪を免れるのは至難の業となっています。つまり、誰でもいつ冤罪被害を受けるかわかりません。民事裁判でも、原告・被告どちらの立場であったとしても、裁判官によっては事件の中身をろくに見もせず、無理やり、恫喝的にでも和解を強要してくるでしょう。

 家庭裁判所や簡易裁判所まで含めれば、多くの人が一生に一回くらいは裁判に巻き込まれます。その時に、問題意識を持って情報を積極的に得て、構造的に問題を捉えているかどうかで、結果が大きく違ってきます。

–法曹界を取材していると、最近の民事裁判では若い裁判官を中心に、強要的に和解を迫る裁判官が増えていると聞きました。また、ろくに審議もせずに一方の主張書面をコピー&ペーストして判決文を書いているという声も多く聞かれるようになってきました。そのため、裁判官がコピーしたくなるような主張書面を書いたほうが有利になると、弁護士は書面作成技術を競争するようになってきているという話もあります。現状は、本書の内容よりも、さらに悪化しているのではないでしょうか?

瀬木 そうかもしれません。また、そうなる理由もあります。今の裁判所のシステムは、戦前の法務省支配の時代から引き継いでいるピラミッド型の独裁国家のような組織なので、腐敗しやすいシステムなのです。近年その腐敗が特に進んでしまったのは、裁判官の平均的な質が下がっていることが大きな要因だと思います。裁判官を採用しようにも、そもそも優秀な人材がそれほどいません。そのため、教養もなく、人間性も育っていない人間が裁判をやっています。

 昔は、優秀な人材を採用でき、かつ職人的な師弟関係のような教育システムが機能していたから成り立っていたのだと思います。しかし今は、そのようなシステムが崩壊してしまっていますから、和解の強要や丸写し判決が広まっても不思議ありません。

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

新田龍/働き方改革総合研究所株式会社代表取締役

労働環境改善による企業価値向上支援、ビジネスと労務関連のこじれたトラブル解決支援、炎上予防とレピュテーション改善支援を手がける。労働問題・パワハラ・クビ・炎上トラブル解決の専門家。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。著書25冊。

Twitter:@nittaryo

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