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東京エレクトロン、規模2倍の米社に買収されるも、“対等”合併と発表の怪

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東京エレクトロン本社がある赤坂Bizタワー(「Wikipedia」より/Rs1421)
 半導体製造装置の巨人が誕生した。国内トップの東京エレクトロンは6月20日に株主総会を開き、世界首位の米アプライドマテリアルズと経営統合する議案が承認された。両社合計の売上高の世界シェアは25%となり、2位の蘭ASMLの2倍になる。

 昨年9月の統合発表から9カ月。総会の議長を務めた会長兼社長の東哲郎氏は、ほっと胸をなで下ろした。特に気を使ったのは“対等”の精神だった。

 統合発表の際、東氏は「日米でまれにみる対等合併だ」と胸を張った。この発言に対して、対等とはいえないとの疑問が出た。米国の通信社は「米アプライドが東京エレクを9300億円で買収へ」と報じた。

 両社はオランダに持ち株会社を設立し、傘下にアプライドと東京エレクがぶら下がる。持ち株会社の株式の過半数となる68%をアプライド側の株主が握り、東京エレクは32%を保有する。証券市場は、アプライドによる東京エレクの買収という判断を下した。

 東氏は持ち株会社の会長に就くが、経営トップのCEO(最高経営責任者)はアプライドのCEO、ゲイリー・ディッカーソン氏だ。経営統合がアプライド主導であることは間違いない。

 東京エレクの株式は、外国人株主が48.7%を保有する。彼らはアプライドによる買収は大歓迎だ。株価が上がって儲かるからだ。統合案が可決された6月20日の株価は、リーマン・ショック直前の高値7360円(08年6月2日)に迫る7129円に急騰した。

●「対等」と言い張るワケ

 それでも東氏は対等にこだわった。なぜか。日本側のメンツを保つためだ。

 日本では対等という場合、社員の処遇を指していることが多い。だが、企業規模が2倍の企業との経営統合が対等なわけがない。統合後、東京エレクの社員が不利な立場になるのは確実だ。

 この不安を払拭するためのレトリックが、対等発言なのである。取締役会を構成するメンバーを同数とし、株式交換比率も公平な値を算出した。日本側の理解を深めるために、ディッカーソン氏が家族と一緒に東京に移り住むという気の配りようだ。

「対等」という言葉にすり替えることで、米国企業に買収される実態をオブラートに包んだのだ。「対等」はあくまで国内向けの表現だ。外国人株主をはじめ株主は買収を大歓迎しているが、買収されたのだという冷厳たる現実を、東京エレクの社員はこれから突きつけられる可能性もある。
(文=編集部)