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混合診療拡大でどうなる?勝者は誰?約15年にわたる推進派・慎重派の攻防と、米国の影

文=編集部
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 2001年の「年次改革要望書」で米国は、医療制度に市場原理を導入するよう提言した。小泉政権の元で医療制度改革を推進したのが、総合規制改革会議議長の宮内義彦氏(オリックス前会長)である。米国と二人三脚で医療制度改革に取り組んだ。そして同年12月、総合規制改革会議は、保険がきく診療と保険がきかない診療を併用する混合診療の全面解禁を求める答申をした。保険診療には健康保険を適用し、残りの自由診療の費用は患者が全額自己負担するという仕組みだ。

 攻防の第1ラウンドでは、無制限に自由診療を認めることに慎重な厚労省の抵抗が強く、総合規制改革会議の答申は日の目を見なかった。第2ラウンドは04年4月から始まり、規制改革・民間開放推進会議の議長に就任した宮内氏は、改革の目玉として混合診療の解禁を取り上げた。同年の米国からの「年次改革要望書」も混合医療を導入するよう提言した。米国の製薬、医療サービス、生命保険業界が三位一体となって医療制度の規制緩和を求めた。その狙いは、公的医療保険が縮小することで、保険会社のビジネスを拡大させることだった。米国系の保険会社は、この分野に強みを持っていた。そして06年6月、ついに小泉政権の下で混合診療の解禁を一部盛り込んだ医療制度改革法が成立した。

●医療費増大の懸念も

 攻防の第3ラウンドは13年1月に始まった。第2次安倍政権が規制改革会議を復活させ、小泉内閣で果たせなかった「岩盤規制」の改革に取り組んでいるが、その背景にはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉が影響している。これまでの経緯から混合診療の全面解禁や株式会社による医療への参入、医薬品や医療機器の価格統制(公的医療保険制度の中で、医薬品や医療機器の価格は公的に決められていること)の撤廃の3点を米国は強く要求してきた。米国の要望に応えるかたちで、規制改革会議は「選択療養制度」を答申したが、厚労省や日本医師会が強く反発。政府は譲歩し「患者申出療養制度」という“玉虫色”の改革プランに落ち着いたが、今後、推進派が巻き返す可能性もある。

 混合診療が全面解禁された場合、国民1人当たりが負担する医療費が上昇するとの見方が強い。自由診療が基本の米国では、個人が高額な医療費に備えて保険会社と契約するため、1人当たりの医療費は日本の2.6倍だ。さらに、保険会社と契約ができない高齢者や低所得者の医療はメディケアという公的な医療保険が適用される仕組みになっているが、同様の仕組みが日本でも導入されれば、公的支出の増加につながるため、結果としてさらなる国民負担増を招く懸念もある。

 混合医療の拡大をめぐっては、さまざまな利害関係者の思惑が交錯するが、医療費を抑制しつつ、かつ国民が低コストで適切な医療を受けられる制度の確立のため、公平な議論が求められている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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