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巨大なガンダム・ビジネス、その異色な戦略 稼ぐ新手法確立、カギは子どもファン獲得?

編集部

 3月に行われた『35周年プロジェクト発表会』に登壇した富野氏は、「ガンダム Gのレコンギスタ」について「作品への評価は終わってみないとわかりませんが、この年にしては良くできたんじゃないかと、今うぬぼれているところがあります」などと発言していた。自身の過去作品を全否定して酷評することも珍しくない富野氏が、ここまでの発言をするということは、かなり自信があるのだろうと見る向きもあるほどだ。

「このことから、バンダイサンライズはもちろんですが、何より富野氏自身の気合の入りようがうかがえますね。ただ、富野作品ファンの私としては、なんともうれしい限りなのですが、ビジネス的見地から見ると不安がないとも言い切れません。富野さんが前回手がけたテレビシリーズである『ターンエーガンダム』は、ガンダムとしては物語が前衛的すぎたためか、作品としての評価は高いものの、プラモデルの売り上げは伸びず、単独のゲームソフト化もされていないため、商業的にはヒットしたとは言い難かった。また、富野さんは『ガンダム Gのレコンギスタ』を今の時代の子どもたちに観てもらいたいという趣旨のメッセージを発信していますが、そこも引っかかるポイントです」(同)

 確かに富野氏は先の『35周年プロジェクト発表会』にて、「ガンダム以降、どのように世代を乗り越えたメッセージを伝えていくか、この15年は本気で考えてきて、具体的に形にできずにいました。『Gのレコンギスタ』で、ようやく輪郭を見ることができました」「あなたたちファンが、今現在お育てになっているお子さんたちに観せていただきたい。お子さんやお孫さんたちに対して、こういう物語があるよと伝えてほしい」と語っていた。

「富野氏が手掛ける作品に限らずですが、今のガンダムシリーズの至上目的は、子どもたちの間でブームを巻き起こし、小中学生ファンを再び取り込むことにあります。以前は子どもも夢中になっていたガンダムシリーズですが、現在のファン層は30代、40代男性がボリュームゾーンとなっているのが現実。ヒットした『ガンダムUC』にしても、これから展開する『ガンダム THE ORIGIN』にしても、大人がコアな客であることは明らかです。もちろん子どものファンがいないわけではなく、2011~12年にテレビで放送されていた『機動戦士ガンダムAGE』や、昨年10月から今年3月まで同じくテレビで放送された『ガンダム ビルドファイターズ』は子どもをターゲットにしており、実際に子どものファンは増えたと思いますが、過去のガンダムシリーズと比べるとブームになったとは言い難い状況です」(同)

 特に『機動戦士ガンダムAGE』は『イナズマイレブン』シリーズや『ダンボール戦機』シリーズで、子どもたちの間でブームをつくったゲームメーカー・レベルファイブの日野晃博社長が手掛けた作品であったが、目標値に対してオモチャやゲームの売り上げ不振だったため、ネット上では“大爆死”などと揶揄されている。余談だが、日野社長が手掛けた『妖怪ウォッチ』が現在、子どもたちの間で合言葉のようになるほどゲームもオモチャも一大ムーブメントとなっているのは皮肉な話だ。

「もちろん1年間で802億円もの売り上げを記録するコンテンツがすぐに揺らぐわけではありません。しかし、バンダイやサンライズとしては収益のバランスを考えて、大人だけでなく子どもも取り込みたいと考えるのは経営上、至極当然でしょう。今の子どもたちも好きになってくれれば、10年後、20年後もガンダム・ビジネスは安泰となります。とはいえ、私を含む30代や40代の男性ファンは放っておいてもガンダムにお金をつぎ込んでいくでしょうが、子どものファンを取り込むのは至難の業。ここで話を富野氏の『Gのレコンギスタ』に戻しますが、氏の手腕をもってしても、小中学生のファンを拡大するのは簡単ではないと思うのです。『Gのレコンギスタ』は子どもをメインターゲットにしていることを明言していますが、富野氏の尖った感性が刺さるのは、ある程度思考が成熟した大人層なのではないかという懸念があります。その一方で個人的には、富野氏の作品で再び子どもたちの間にブームを巻き起こしてもらい、ガンダムというコンテンツを今以上に大きなものにしてもらいたいと願っています」(同)

 いずれにしても根幹となるアニメ作品のヒットが、プラモデルやゲームといった派生商品の売り上げを左右するのは確か。これから日の目を見る新作『ガンダム THE ORIGIN』や『Gのレコンギスタ』がどこまでヒットするか注目していきたい。
(文=編集部)

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