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放送中止の東京ガスCM、なぜ批判?何が問題?“就活生を落とす側”大企業に予測不可能

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東京ガスCM「家族の絆-母からのエール編」(無料動画サイト「YouTube」より)

 東京ガスが、視聴者からの批判が殺到した同社CMの放送を中止していたことについて、ここ数日、インターネット上で大論争になっている。

 問題のCMは、東京ガスが1社提供番組『食彩の王国』(テレビ朝日系/関東ローカル/毎週土曜午前9時30分より放送)向けに制作している、90秒のロングバージョンCMである。「家族の絆」というシリーズもののCMで、2010年に放送された第1作「家族の絆-弁当メール編」、11年に放送された「家族の絆-おてつだい券編」、そして昨年から今年にかけて放送されている「家族の絆-おばあちゃんの料理編」が、フジサンケイグループ広告大賞のメディア部門で、それぞれ最優秀賞、優秀賞、最優秀賞を受賞している。ちなみに「家族のはなし」という類似シリーズもあり、こちらは「おとうさんのチャーハン編」「かっこ悪い父親編」「最後の大会編」などが代表作だ。

 いずれも演技派の役者を起用し、ドラマ性のある泣けるつくりになっている。一応、ガスコンロやミストなど、東京ガス製品のCMではあるのだが、製品を前面に出していないので、製品のCMではなく企業イメージ広告だと捉えている視聴者は少なくない。

 今大論争になっているのは、今年2月1日から22日までの計4回の土曜日に『食彩の王国』で放送されたCM「家族の絆-母からのエール編」だ。主人公は就活中の女子大生。何社も落ち続け「全人格否定されているような気になる」という、就職試験に落ちたことがある人だけでなく、リストラやパワハラ経験者にとっても、ずしんと響くセリフが登場する。

 やっと最終面接まで進んだ会社が1社あり、それをメールで母親に知らせ、期待に胸を膨らませてケーキを買って帰路につく。だが、玄関扉の前で不採用通知、通称「お祈りメール」が来てしまい、家に入れなくなる。近所の公園のブランコで鬱々としていると、母親がやってきて、優しく慰められたらこらえていたものが一気に噴き出し、声を上げて大泣きしてしまう。それでも母親の温かい手料理で気を取り直し、元気にけなげに就活にがんばり続ける、というストーリーである。

 CM自体はガスコンロのCMなのだが、がんばる就活生を温かい料理で静かに応援する母親、そしてその母親を応援する東京ガス、というのが伝えたかったメッセージなのだろう。このCMの一体どこが問題で、批判をするのは一体どういう属性の人で、どういう理由で批判をするのか。

●予想は不可能

 実はこのCMは、当事者にとってはあまりにもリアルで傷口に塩を塗り込むようなものらしいのである。ハッピーエンドなら良かったのかといえば、それもどうやら違う。ハッピーエンドではリアリティがなく嘘くさい、自分の境遇と照らし合わせてムカつく、という心理も働くようなので、そもそもテーマ設定自体がダメということなのだろう。

 3年前に長女がこの女子大生と同様の境遇にあった60歳代の知人も、「就活に苦労している子供の親にとっても、おそらくこのCMは不愉快」と見る。ご本人は就職に苦労をしたことはなく、その後も大きな挫折を味わっていないだけに、ずいぶん前に筆者が「就活で何度も落とされると、全人格否定されているような気分になる」ということを話したら、ずいぶん驚いていた。