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吉田潮「だからテレビはやめられない」(7月11日)

NHKの底力を痛感する、目の付け所と威力 民放各局も後追いするも、おこぼれ頂戴感が否めず

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NHKスペシャル』公式サイト(「NHK HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 あらためてNHKの底力を痛感することが多々ある。特に、『NHKスペシャル』(毎週日曜夜9時放送)がひねりだすテーマの目の付け所と威力と波及力には感心する。というのも、『Nスペ』が送り出したテーマが大ヒットすると、こぞって民放各局が取り上げるからだ。

 記憶にある過去のヒットテーマをあげるとすれば、「無縁社会」「孤独死」「ダイオウイカ」といったところか。『Nスペ』が取り上げた途端、民放のニュース番組や情報番組が後追いする。ダイオウイカなんかはバラエティ番組までもが追随し、二番煎じから「笑い」の対象へと転換させたりもしている。「食材としてのダイオウイカ」「地震との関連はどうなの、ダイオウイカ」「ダイオウイカって響きがキャッチー」など、人々の興味の多様性をがっつりとらえたのだろう。個人的にはそんなに興味がないのだが、かくしてダイオウイカはキラーコンテンツとなったのである。

 ここ数週間で、新たなヒットテーマも浮上しているようだ。「認知症」である。5月11日に放送された『“認知症800万人”時代 行方不明者1万人~知られざる徘徊の実態~』は、介護施設に保護された高齢者が認知症のために身元がわからず、行方不明者となっている現実にクローズアップしていた。

 認知症の怖さというよりは、認知症患者を抱える家族の心の闇も垣間見える内容だった。高齢者が行方不明になっても「気づかない・探せない・あえて探さない」のかもしれない。地方自治体によっては、FMラジオ局やガソリンスタンドなどで行方不明者の手配を呼びかけるなど、ネットワークをつくって予防策や対策を講じているところもあるそうだ。

 ところが、「(行方不明の高齢者の)個人情報を本人や家族の同意なしに、第三者に提供する」ことへの大きな壁があるという。特に、警察はこの壁を取り払うことに懸念もあるそうだ。家族になりすまして個人情報を引き出す悪しき輩も多いわけで、ストーカー対策などの観点からも、個人情報保護法の壁は崩せないところでもある。まさにジレンマ。

 放送翌日、テレビの反響で身元が判明した高齢者がいた、という記事も新聞に掲載されていた。やっぱすごいな、『Nスペ』。民放局が時々かます「犯罪者の情報提供呼びかけ番組」なんかよりも、あまねく広く伝わる伝播力があるのだ。

●食い付く民放各局

 で、反響が大きかったもんだから、「それきたか!」といわんばかりに食いつく民放各局。午前中の情報番組や夕方のニュース番組でも、「認知症」「徘徊&行方不明者」をテーマに、VTRづくりに励んでいた。浮かび上がりにくい社会問題が広く提起され、頻繁にテレビで取り上げられるのはいいことである。ただ、民放の工夫のなさ、『Nスペ』のおこぼれ頂戴感は否めない。高齢の親を抱える身としては(まだ元気だけれど)、「認知症」「介護」のキーワードには多少反応する。そういう意味で『Nスペ』は毎回チェックしているのだが、その後の民放各局の動きも俯瞰してみると、2度面白い。

 あ、個人的におすすめしたいのは、「未解決事件」。文字通り、未解決事件をあらためて取材し、再現ドラマで見せるという手法だ。手練れの役者が演じる分、リアリティが増す(多少、演出過剰ではあるけれど)。過去には、「グリコ森永事件」「オウム真理教」「尼崎殺人死体遺棄事件」を取り上げてきた。次は何の事件か、楽しみでもある。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。