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モンゴル、なぜ金融危機前夜に?急激なインフレと通貨下落、広がる国債デフォルト懸念

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図1:モンゴル政府の外貨準備高の推移。「モンゴル経済概況(2014年1月)」(作成:日本貿易振興機構<ジェトロ>/「ジェトロ HP」より)
 2012年11月、モンゴル政府は総額15億ドルの国債(通称:チンギス国債)を発行した。内訳は、5億ドル分が期間5年の利回り4.125%、残りの10億ドル分は期間10年の利回り5.125%である。しかも、国債はドル建てだった。当時、アメリカは量的緩和政策の最中であり、当然政策金利はゼロだった。つまり、ドル建て金融商品の金利はかなり低迷していた。


 このチンギス国債は当時としてはかなりの高金利商品だったため、世界中の投資家が群がり、文字通り飛ぶように売れた。

 しかし、当然そこにはリスクもあった。最大のリスクは、モンゴルが国家破産して期限までに償還できないことである。では、この国債の償還が可能かどうか、以下の事実を総合的に勘案して考えてみよう。

(1)モンゴルは過去22年間で5回経済が破綻し、IMF(国際通貨基金)の救済を受けている。
(2)モンゴルは中国とロシアに挟まれた内陸国である。
(3)チンギス国債の発行総額15億ドルは、発行前年のモンゴルの名目GDPである87.6億ドル(米ドル換算)の約20%に相当する。
(4)当時のイタリアの10年物国債の利回りは約4.75%程度、ザンビアの10年国債の利回りは5.625%だった。
(5)モンゴルの外貨準備は減少している。
(6)モンゴルのインフレ率は2桁台である。
(7)株式市場は10年をピークとして12年時点ですでに30%下落している。
(8)12年の国政選挙で政権交代があり、新政権が突如資源ナショナリズムに舵を切った。その後、世界最大の銅山オユトルゴイの開発が無期限延期となっている。

 チンギス国債の発行から2年が経過した今年、モンゴル株式市場はいまだに低迷しており、インフレの進行もかなり深刻だ。08年のリーマンショック以降、モンゴルの通貨(トグログ)は対ドルで25%も下落したが、現在はその時よりもさらに3割切り下がった水準の中で上下動している。モンゴルの経済学者や評論家は、政府が通貨暴落を容認していることを非難しているが、政府は景気の低迷を恐れて大胆な引き締め政策を採用していない。

 モンゴルではすでに資本取引規制が撤廃されており、投資家は認可された証券会社を通じて国内外に自由に投資することができるが、国民の株式や外貨に対する投資意欲の低さを証券会社は嘆いている。確かに、モンゴルの株式市場は1992年からスタートし、まだ22年の歴史しかない。とはいえ、資源価格高騰を背景とした好調な経済成長に支えられ、モンゴルトップ20株価指数は10年初に6000ポイント程度まで上昇した。11年2月にはさらに急上昇して3万2301ポイントを記録するなど、実に5倍以上の高いパフォーマンスだった。しかし、これは明らかに実力の伴わない数字であり、11年2月にピークをつけた直後から株式指数は急落し、12年半ばには2万ポイント台まで下落した。昨年はさらに値を下げて、現在は1万6000ポイント前後と低迷している。