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モンゴル、なぜ金融危機前夜に?急激なインフレと通貨下落、広がる国債デフォルト懸念

文=上念司/株式会社「監査と分析」代表取締役
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●低迷する不動産市場

 モンゴルの不動産市場は株価にほぼ連動し、10年から12年ぐらいまでは活況だったが、やはりここ数年は低迷している。国内大手不動産、モンゴリアンプロパティ関係者によれば、最大の問題は通貨の下落である。なぜなら、多くの物件価格はドル表示のため、トグログの暴落によって自動的に値上げになってしまい、顧客が離れていくからだそうだ。さらに、冒頭述べたマクロ環境の変化により、実需という意味では相当低迷しているとのことである。

 現在、モンゴル政府は住宅ローンの政策金利を年率8%固定にする政策を発表し、財政的な援助を行っている。この金利は日本人からするとかなりの高金利だが、モンゴルにおける通常の住宅ローンは月利で1.2~2%であることに比べると、かなりの低利ローンということになる。しかし、この政策は政府の財政的な負担を増大させ、チンギス国債の償還にマイナスの影響を及ぼすことが懸念されている。

 12~14年にかけて、状況はむしろ悪化したようにしか見えない。もちろん、背景には国際的な資源価格の低迷があることは間違いない。モンゴル経済はロシア経済と同じく、資源価格が高騰すると投資が増え、投資が増えることによって国内の消費が増え、景気が良くなる。資源価格が低迷する時は、これとは反対のことが起こるわけだ。モンゴルが得意とする石炭や銅の価格はリーマンショック以降一時的に回復したものの、長期的には低迷している。景気が悪ければ税収は増えず、当然国債の償還には赤信号がともる。

 日本の場合、いくら巨額の国債残高があるとはいえ、すべて円建てであり、保有者の9割以上は日本人だ。最悪の場合、円を印刷すれば全額償還することは可能である。これに対してモンゴルのチンギス国債はドル建てであり、モンゴル中央銀行はドルを印刷することはできない。つまり、国債償還のためには、国中のドルをかき集めなければならないのだ。

●激減する外貨準備高

 ところが困ったことに、モンゴル政府のドルの量(外貨準備高)は昨年から激減している(本文冒頭の図1参照)。

 外貨準備高はチンギス国債発行の翌月をピークとして、その後は急減した。すでに、昨年末の段階で20億ドルを大きく割り込んでいる。多くの生活物資を輸入に頼っているモンゴルにおいて、貿易の決済可能期間も重要だ。しかし、昨年初は35週間だった決済可能期間は、1年後には10週間まで短縮してしまった。これは下手をすると、運転資金のショートが起こるかもしれない。

 加えて、14年に入ってからモンゴル中央銀行は外貨準備高の公開をやめたが、「よほど外貨準備が減少しているのではないか」との懸念が広がっても仕方ない。図1のグラフを現在まで表示すれば、外貨準備高は2億ドル程度まで減少している可能性すらあり、チンギス国債の償還はますます遠のいているかもしれない。

●3つの解決策

 以上見てきたように袋小路に陥りつつあるモンゴル経済について、英フィナンシャルタイムズ紙は、以下の3つの解決策を提案している。

(1)オユトルゴイ銅山の開発を再開し、キャッシュを稼ぐ
(2)中国に支援を仰ぐ
(3)世界銀行、アジア開発銀行、韓国、日本など第三者に支援を仰ぐ

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