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吉田潮「だからテレビはやめられない」(7月17日)

フジ『若者たち』、なぜベタでクサい?セクハラ満載、デリカシーのなさと思慮欠如

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>『若者たち 2014』公式サイト(「フジテレビ HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 意図せずして、タイムリーだなと思った連続テレビドラマがある。『若者たち 2014』(フジテレビ系)だ。何がタイムリーって、妻夫木聡が演じる佐藤旭の「セクハラ具合」や「パワハラっぷり」である。稚拙な野次を飛ばした自民党大物議員や、意味不明の記者会見で号泣する地方議員がこの1カ月で話題になっていたので、意図せずして、タイムリーというワケだ。

 妻夫木が演じるのは5人兄弟の長男。両親を失ってからというもの、弟妹を守るために中卒で身を粉にして働いてきた苦労人である。家族構成を解説しておくと、ムショ帰りのDV系次男に瑛太、恩人である医師(吉岡秀隆)との不倫にハマる看護師の長女・満島ひかり、演劇かぶれの留年大学生の三男に柄本佑、予備校生でいかにも気の弱そうな四男に野村周平。今の時代、描くのが困難であろう「平成版・大家族モノ」である。

 妻夫木の言動には目を見張るものがある。別の意味で。長男であり、家族の大黒柱としての自負(実際には満島のほうが経済的な柱なのだが)、弟や妹を支配下に置きたがる前近代的な思考(パワハラ)、豪放磊落を装うもただただ理不尽に説教をたれまくる性質、付き合っている弁当屋の彼女(蒼井優)がキャバ嬢と知った瞬間に漏れ出てくるセクハラ呪詛。これ、政治家のオッサン、特に自民党系列の中に根付く「思慮欠如」と同じだわ、と。

 説教を滔々と垂れる割に非論理的。「できちゃった婚」を否定しておきながら、自分は妊娠を打ち明けた蒼井に対して「本当に俺の子か?」と問いただすKYっぷり。説教臭さをさらに増幅させる歌『若者たち』を繰り返し口ずさむ。深く考えることなく、直情的に動いて、妹を結果的に追い詰める無神経ぶり。「昔気質の頑固親父」ってヤツね。妻夫木が空回りすればするほど、弟や妹は成長していく。冷静さを身につけていく。つまり、妻夫木の存在は必要悪なのだ。

 これがどうしてもすんなりと受け止められない。悪い人間でないことはわかるが、29歳でイマドキのモラルとデリカシーに欠けた姿はどうも説得力がない。

●飲み込めないほどクサイ演出

 しかも、初回の演出が微妙だった。プロレス観戦をしているうちに、なぜか妻夫木は叫びながらリングに上がり、レスラーに遠慮なくボッコボコにされる。私の大好きなフジのドラマ『最高の離婚』でも、同じような場面があったことを思い出す。既視感に加えて、レスラーが本気で素人に暴行するなんてありえない。しかもわりと長回しで打ちのめされていく。そんな妻夫木を介抱する蒼井。ふたりの間のいさかいは自然と雪解けへ……。

 え。これでいいのか? 昭和40~50年代によくあった、殴り合いの喧嘩の後で「お前やるな」「お前こそ」「ハハハ」みたいな、ベタすぎる展開に驚いた。このシーンはあきらかに失敗だったと思う。ドラマだから、フィクションだからと飲み込めないほどクサイ演出である。脳内でスーッと冷める音がしたほど。

 ただし、この前フリ「妻夫木=熱きベタな必要悪」は次男・瑛太の登場によって変わってくる。なぜか集団的自衛権の文字が頭に浮かぶのだが、この一家がどう変化していくのか、非常に興味がある。やさぐれた長澤まさみやこじらせ系の橋本愛の動向も気になる。今期のフジに多い、「初回で辟易して視聴を止めるタイプ」のドラマではない。役者もそろっていることだし、この後の展開を注視していきたい。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。