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高級食材市場、なぜ縮小?よい「食」を評価する消費者減少の理由と、その経済的弊害

文=有路昌彦/近畿大学農学部准教授
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 なお、皮肉なことにノルウェーは日本市場で高い評価を得られたサーモンを、「日本の市場で認められた生食可能なサーモン」という謳い文句で全世界にマーケティングしており、日本人が本来持っていた「目利き能力の高さ」に半ばフリーライドして世界中の市場を手に入れています。このように日本の消費者がそもそも持っていた「目利きの能力」すなわち「よいものをよい」と評価する能力は価値があり、それを上手に活用することで世界の市場を獲得できるのです。

 そのほかの理由として、接待が少なくなったからと指摘する人もいますが、本当によいものを提供してくれるようなところで飲食を楽しむのはとても価値のあることです。いつもコスト削減で、大して美味しくもない酒や料理で「ノミュニケーション」を成立させても、それはただ場を設けているだけの話で、本当に人をもてなしたり、あるいは価値を共有しようとしているわけではないのではないでしょうか。

 筆者は学生と接する時、彼らには美味しいものを食べるということを経験させるようにしています。無論お金がないですので、自分で調達して自分で調理させるというところからの指導になります。先日は学生がスッポンの食に関する経済や文化を研究したいということだったので、学生らは自ら調達と調理を行い、「うまいものはうまい」ということを学んでいました。

 よいを味わうことは、よい食の価値を理解する最も重要なプロセスであり、やがてそれが「食べたい」「食べさせたい」という意思になり、そこで初めて需要が生まれるのです。よい食に対して正しい評価が生まれるのは、こういった経験に裏づけされる需要があってのことであり、その需要が経済と文化を生みます。なので、まず「美味しいものを食べる」ということは、我が国が世界の市場に日本のものを売り込んでいく上で、最初のステップになるのではないでしょうか。
(文=有路昌彦/近畿大学農学部准教授)

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