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吉田潮「だからテレビはやめられない」(8月12日)

生瀬勝久が10年近く連ドラに出続けるワケ 高慢&卑怯でも悪人に見えない“小市民性”

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『ゼロの真実~監察医・松本真央』公式サイト(「テレビ朝日 HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 ここ10年近く、連続テレビドラマにずーっと出ずっぱり。なぜこの人が「日本メガネベストドレッサー賞」に選ばれないのか不思議なくらい、メガネと一体化したキャラクターでもある。時にいいかげん、時に嫌味。メガネキャラの多様性をここまで表現しているのに。だいたいベストドレッサー賞とつくものはほぼデキレースで、眉唾モノなんだけどさ。

 ということで、今回のテーマは俳優・生瀬勝久である。今期の連ドラで、実は2作品に出演。どっちのナマセがお好みか、問うてみたいところでもある(個人的には同じ役者が同時期に出るのは、あまりよろしくないと思うのだが)。

 ひとつは『ゼロの真実~監察医・松本真央』(テレビ朝日系)。武井咲主演の監察医モノで、ナマセは東大出身の部長監察医の役。コメディ要素に必須の権威主義者だが、実に矮小&チンケな存在で、群を抜いてゲスい。劇中で頻繁につるむ共演陣は、六角精児に尾美としのり、でんでんと手練れ揃いだが、ナマセの小物感はダントツである。無愛想&無礼な武井にガン無視され、プライドが超高層な真矢みきからは足蹴にされる。それでもめげずに、部下に対しては威張り散らすという憐憫を誘う男でもある。「ナマセはこうでなくっちゃ!」と首肯する人が多そうな、納得のいくキャラクターだ。もちろんやりすぎな感も否めない。普通、エリートはエリートであることを鼻にかけても口にはしない。じわじわと肌で感じさせる陰湿なやり口のほうがリアルエリートなのに、ナマセはエリート意識を公言してやまない。完全なるコメディアンでもある。

 もうひとつは『東京スカーレット』(TBS系)。ドラマにありがちな、特別に編成された部署「警視長捜査一課NS係」が舞台の刑事モノ。ナマセは後ろ暗い部分もある一匹狼の刑事役(今回はノーメガネ)で、常に単独行動。主人公の水川あさみにキーキー言われながらも、無頼派気取りで集団行動を拒む役だ。といっても、なんだか非常に中途半端なのである。

 そういえば、ここ最近のナマセはシリアスな役も数多くこなしている。『MOZU』(TBS系)や『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)などで鼻息荒く挑んでいたことが記憶に新しい。ところが、この『東京スカーレット』がそもそも中途半端な設定で、部署もキャラも物語も、すべてが中途半端。キムラ緑子のヅラも中途半端だし、近藤公園の真面目っぷりも、水川あさみの女子っぽさもすべてがとにかく中途半端。1本の原稿の中で、これだけ「中途半端」を連発するのは久しぶりである。

 個人的には『ゼロの真実』のナマセのほうが好みだ。作品自体も、こっちのほうが断然面白い。脚本も仕掛けも設定も。ナマセの連ドラ連投ぶりがあまりに長期間続いているので、やはり「王道のナマセっぽさ」を期待してしまうのかもしれない。王道のナマセって何かといえば、1に高慢、2に卑怯、3、4がなくて、5に脆弱。なのに決して悪人には見えず、実はとっても弱くて脆くて、自虐的。傲慢なんだか繊細なんだかわからない小市民といったところか。

 頼りがいのない役どころばかりなのに、ナマセが脇にいるとぐっと安定感が出る。あと2年くらいは連ドラ連投をこなしていくのだろう。でも、すでに後釜がもういるのでご安心を。卑屈インテリメガネといえば、野間口徹。彼が継承してくれるに違いない。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。