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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第11回

苦境マック、乗り越えるべき2つの壁 強みのクーポンと調達システム、一転して弱みに

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO

 例えば、前述のリンガーハットではクーポン乱発の経営危機後、創業者である米濱和英氏が社長に復帰し、デフレで外食チェーンが値下げ競争を繰り広げる中、食材をすべて国内調達に切り替え、品質をアピールして値上げを行うことを決定します。

 他の取締役はライバル他社が値下げに走る中、自社のみが値上げするのは顧客の理解を得られないと反対しましたが、米濱氏は不退転の決意で値上げを断行。結果として、顧客は品質の高まった“新生”ちゃんぽんに相応の価値を感じ、値上げにもかかわらず、客足が遠のくどころか逆に増加に転じ、リンガーハットは見事倒産危機から復活を果たしたのです。

 マクドナルドにおいても、現在の日本の消費者の関心は、価格よりも価値、特に食の安心・安全にあるのですから、一度にすべてを切り替えることは物理的に不可能だとしても、最終的には原材料の品質にこだわった調達に切り替えていかなければ顧客の信頼を回復することは難しいといえるでしょう。

 ただ、ここに第2の壁、グローバルサプライチェーンの壁が立ちはだかるのです。

 マクドナルドではGPSが、グローバルレベルでビジネスを展開する上での強みとなり、日本法人独自での調達は難しいといわざるを得ません。

 とはいえ、中国での使用期限切れ鶏肉原料の問題に端を発した業績の急降下が物語るように、今の顧客に求められているのは安さよりも、食の安心・安全であるという事実を踏まえれば、この壁を乗り越えない限りは業績を回復させることさえままならないといっても過言ではないでしょう。

 以上みてきたように、マクドナルドにとっては越えなければならないと頭ではわかっていても、現実には越えることが難しい大きな2つの壁が立ちはだかっています。もちろん、業績回復という“山頂”を目指すには、これらの壁を避ける他のルートも存在します。大きな壁を正面から乗り越えなくても、迂回するルートはいくらでもあるのです。

 果たしてマクドナルドは、どのようなルートで“登頂”にチャレンジするのでしょうか? その戦略に注目が集まります。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)

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●安部徹也(あべ・てつや)
株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。1997年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業に留まらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』は、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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