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吉田潮「だからテレビはやめられない」(8月19日)

TBSの“ヤマザキのランチパックな”ドラマ、なぜ豪華出演陣なのに観る気になれない?

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金曜ドラマ『家族狩り』公式サイト(「TBS HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 今クール(7~9月期)の連続テレビドラマで一番深くて面白いのは、松雪泰子主演の『家族狩り』(TBS系)だ。家族という非常に難しいテーマを多角的に映し出していて、セリフも見せ方も繊細かつ緻密である。であるにもかかわらず、実は一番運の悪いドラマとなっているようだ。日本テレビがジブリ映画を数週連続で放映する時間帯と重なるわ、主題を地で行く「佐世保女子高生殺人事件」がリアルに起きちゃうわで、いろいろと憂き目に遭っている(みんな永遠にトトロが大好きだよね……)。上質な問題作なのに視聴率ふるわず、話題作にならない。せっかくの良作なのに、つくづく運とタイミングが悪かったなぁと思う。

 一方で、強力な競合相手がいないにもかかわらず、微妙な熱しか生み出せていないのが日曜劇場『おやじの背中』(TBS系)である。脚本家も主演俳優も毎回異なり、さまざまな「父親像」を描き出すという、なかなかに挑戦的な試みだ。視聴者の趣味や好みがそのままダイレクトに数字に反映されるという、つくり手には過酷な企画……と思っていたのだが、開けてみたらちょっと違っていた。イマドキ脚本家や主演俳優で観るドラマを選ぶ人は、意外と少ないようだ。話題になったら観る。煽られたら観る。そんなもんかなと。

 通常の連続ドラマの動き同様、初回はお試し&お毒見&ご祝儀で高視聴率をとるも、その後はずっと低迷。では初回がそんなに秀逸だったかといえば、そうでもない。岡田惠和・作で、かなりウエットな父娘関係を田村正和と松たか子が演じたのだが、たぶん田村の滑舌と健康状況を確認する視聴者も多かったというだけ。

 2話は坂元裕二・作で役所広司と満島ひかり(これも距離の異様に近い、そして暑苦しいボクサー父娘の物語)。3話は倉本聰・作で西田敏行(昔気質のワガママ社長が自作自演の失踪騒動でてんやわんや)、4話は鎌田敏夫・作で渡瀬恒彦と中村勘九郎(闘争時代を生き抜いた頑固な父と反発する息子の見解の違いと小競り合い)。3話と4話に関しては、時代というか、年代を感じる内容で、50~60代には芳ばしい内容だったのかもしれないが、いかんせん「懐古主義」が強くて。5話はグンと若返って、木皿泉・作で堀北真希と遠藤憲一。父娘関係の湿度は低めでコメディ要素が強い軽めの物語だった。

 いずれも豪華メンバーではあるのだが、やはり1時間では「食い足りない感」が強いのかもしれない。父親をテーマにさまざまな家族観あるいは親子観が描かれていくのだが、毎回観比べようというモチベーションがいまいち湧き起こらない。

 この感じ、なんだろうなと思ったら、山崎製パンのランチパックのようだと思った。ランチパックって、実に多種類の味があって、いろいろと楽しめることになっているのだが、ひとつひとつは絶賛するほどおいしくはない。中にはトーストすると絶妙にうまくなるようなタイプもあるのだけれど、微妙に飽きる。基本、食パンなので柔らかく、咀嚼の必要性もあまりなくて、あっという間に食べ終わる。ハイカロリーなのに満足感がやや低い……。

 全10話あるので、あと5話分残っているのだが、どうなるかな。やっぱりランチパックだったなと思うのか、「うわ、このランチパック、神ーッ!」となるのか。もしかしたら放送が全部終わってから視聴者評価が盛り上がるのかも。それはそれで面白い。残り半分に期待と不安を寄せつつ、チャレンジした日曜劇場の心意気だけは買おうじゃないの。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。