NEW

フジ『HERO』、なぜ面白い?充満するキムタク“お膳立て感”、マイナスな登場人物光る

【この記事のキーワード】

, , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『HERO』公式サイト(「フジテレビ HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 なんだかんだいって高視聴率をマークしている今クール(7~9月期)の連続テレビドラマ『HERO』(フジテレビ系)。正直、まったく興味がなかったのだけれど、やはり平均視聴率20%超えというのはすごいと思う。今期ドラマは視聴率が伸び悩み、せっかくの良作もなんだか振るわないことになってしまっているのに、これだけは何か組織票が動いているのか疑わしいほどの高視聴率だ。ということで、『HERO』のどこが面白いのか、その要素を炙り出してみる。

 登場する検事や事務官たちが、それぞれなにかしらの「マイナスポイント」を抱えているところがいいのかもしれない。杉本哲太はいわば「身売り男」だ。恋人を捨て、東京地検次席検事(角野卓造)の娘と策略結婚をして、東京地検特捜部に戻りたいと願う上昇志向の塊だ。その卑屈なまでのゴマスリ、そして嫁と義父に頭の上がらない、魅力ゼロの男を演じている。

 杉本の元恋人だった吉田羊は、京都地検の女・大塚寧々(しかも結婚して幸せ)にあらゆる面でマウンティングされ、感情をあらわにする。若い嫁といつまでもラブラブしている担当事務官の正名僕蔵に対しても、パワハラの矛先を向ける「沸点低めのキレ女」。正名は正名で、元は警備員だったのに、紆余曲折の苦労を経て、事務官に。努力の人であるにもかかわらず、劇中では虐げられっぱなしの「万年浮かばれない男」である。

 さらには東大卒のエリート検事であるはずの濱田岳は、その精神性の幼さと脆さを前面に出して、主人公をひきたてるための「道化」を演じている。NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』といい、コレといい、主人公をぐっとスマートに大きく見せるために、濱田、大活躍。その実力とポテンシャルはかなり高いのだが、なんだかジャニーズ御用達になりつつある。 

 そして、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)で一躍「食べる人」となってしまった松重豊も、この作品の中でやたらとモノを食べさせられているような。コワモテ・切れ者で常に正しい判断をくだす人格者のはずが、ちょっぴり「かわいいオジサン風味」に描かれている。北川景子も元ヤンキーという過去を隠し、趣味はおひとりさまメシであり、美人であることを明らかに自覚した「友達いない女子」を好演。美人で熱血で一所懸命だけじゃない、腹黒さをしっかり滲み出しているのも悪くない。

 このほか、小日向文世や八嶋智人、田中要次あたりの手練れ脇役の「合いの手」もうまく融合し、マイナス要素を自覚した登場人物たちが土台となって、「ひとつの舞台」を仕上げているところがウケているのかもしれない。事件をすべて解決に導き、舞台を仕上げるのは、マイナス要素をまったく自覚しないスーパーヒーローである木村拓哉。いいね、この激しいお膳立て感。登場シーンが少ないのも功を奏しているのだろう。

 でもこれだけでこんなに視聴率が高くなるというのは、謎でもある。観続けている人の最大の関心は「牛丸検事(角野)の娘で、杉本哲太の嫁は、ハリセンボンの近藤春菜かどうか」である。劇中で「(牛丸検事と)顔がそっくりな娘」とセリフにあまりにも頻繁に出てくるので、それを確認するまでは、『HERO』の視聴を止めることができない。春菜を出すなら、最終回まで引っ張ったほうがいい。あるいは続編だのスペシャルまで引っ張るか。まんまと春菜を出すのか、思いきり裏切る斬新な人選をするのか。私もしばらくは観続けよう。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。