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消費税の軽減税率、広い業界で反対の動き 社会保障削減、再増税の懸念も EUでは混乱

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経団連のHPに掲載されている「消費税の複数税率導入に反対する意見 」
 消費税が来年10月にも10%に上げられると見られているが、与党税制大綱に盛り込まれた軽減税率をめぐって反対意見が強まっている。

 軽減税率導入に反対しているのは、日本経済団体連合会(経団連)、日本商工会議所、日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会など、大多数の業界だ。与党の自民党と公明党は現在これらの業界へのヒアリングを行っている最中で、今年末に導入の可否について結論を出す予定。しかし導入は厳しい様子だ。

 軽減税率とは、生活必需品の消費税の税率について低く抑えるというものだ。低所得者への配慮として、公明党が提唱した。というのも低所得者は一般に、家計支出に占める食費の割合であるエンゲル係数が高いため、生活必需品への課税が軽減されると、その恩恵は大きいと考えられるからだ。

 しかし実際には、生活必需品の購買金額は富裕層のほうが多いため、減税効果の恩恵は富裕層のほうがより享受する結果となる。これが経済成長につながればいいのだが、一般的にそうはいかず、消費税の減収は社会保障財源を減少させる。そして給付の削減や消費税のさらなる引き上げにつながりかねない。低所得者に配慮されたはずの軽減税率だが、これでは朝三暮四になってしまいかねない。

●導入したEUでは混乱広がる

 一方で、軽減税率導入は事業者の負担も重くする。軽減税率の対象をどこまで含めるのか、具体的な分類は煩雑だからだ。

 例えば早くから付加価値税を導入したEUですら、電子書籍をめぐる裁判が行われるなど、混乱が生じている。そもそもEU内では、「文化財」と見なされる書籍や雑誌の付加価値税は軽減されてきた。しかし、電子書籍は欧州付加価値税指令では「電子的に供給されるサービス」とされ、課税額は20%前後と高く設定されていたのだ。便益の内容が同じなのに媒体が紙であるか電子であるかによって課税率が異なるのは奇異であるとして、欧州委員会は2011年12月に「VAT(付加価値税)の将来に関するコミュニケーション(指針)」を発表し、電子書籍に関する課税について見直しを検討していた。

 そこで12年7月からフランスは7%、ルクセンブルクは3%という軽減税率を電子書籍に適用することにしたのだが、欧州委員会は13年9月に両国を欧州付加価値税指令違反として欧州司法裁判所に提訴した。その一方で、昨年の欧州委員会でポーランドが電子書籍を非課税化するように提案。トルコも昨年12月に、電子書籍の付加価値税を18%から8%に引き下げることを決定するなど、電子書籍の課税を見直す機運は高まっている。これらを見ると、ライフスタイルの変化を制度の中に押し込めることの難しさがよくわかる。

 軽減税率の問題ばかりではない。4月の消費税増税の影響で、4-6月のGDPはマイナス6.8%(年率換算)と一気に落ち込んだ。1997年に消費税を3%から5%に上げた時はマイナス3.5%だから、これに比べると約2倍もの減少率になる。景気への懸念を解消しないまま、消費税10%へ突き進めるのか。安倍政権の歩む道は限りなく険しい。
(文=安積明子/ジャーナリスト)