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ストレス検査義務化が法制化、職場うつの抑制になるか?職場改善面や実効性に疑問の声も

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「労働安全衛生法の一部を改正する法律案の概要」(「厚生労働省HP」より)
 職場でのストレスを主因として、うつ病を発症させるビジネスパーソンが増えている。多くの企業を取材する中で、メンタル不調者が1人もいないと断言されたことはない。調査に基づくことではなく感覚的な見方でしかいえないが、大企業、中堅企業、官公庁など、あらゆる業種で職場うつは蔓延中といえる。


 その要因について筆者は5年以上調べてきたが、「断定できない」というのが結論だ。雇用不安や景気情勢など社会的な背景、家庭問題、職場問題など要因は多岐にわたり、それらがさらに細分化され、個々に複合的に絡み合っている。100人いれば100通りの要因がある、といってもいいのではないだろうか。だから、すべてが薬で治せるわけでもないと思うが、複雑な要因が重なる過程では、それらがストレスという状態に変化し、その人の中に蓄積されていく、と考えられる。

 そのストレス度合いを検査することで心の病を防ごうとする強制的な取り組みが、2015年度から始まる。従業員50人以上の企業は年に1回、医師、保健師によるストレス検査を受診希望の従業員に対し実施しなければならない。これは6月に閉会した通常国会で成立した「労働安全衛生法の一部を改正する法律」に明記された項目であり、企業にストレス検査の実施を義務付けた。
 
 50人以上の企業が対象となったのは、産業医の選任が必要とされる企業規模だからである。厚生労働省の原案では、すべての企業を対象にしていたが、自民党の厚労部会で結果管理の悪用が懸念され、50人以下の企業は努力義務となった。また、受診対象者も全員から希望者のみとなった。

●検査の実効性に疑問の声も

 ストレス検査を義務化する厚労省の目的は、職場を原因とする自殺者数を減らすことである。職場でのストレスがうつ病を招き、それが自殺へとつながるケースが多くあったからだ。12年の1年間で、原因が判明した自殺者約2万人のうち、職場を原因とする自殺者は約2500人だった。また、同省は昨年4月に策定した第12次労働災害防止計画において、4年後にはメンタル対策に取り組む企業を80%以上(現状は47%)とする目標を掲げている。こうした目標を達成するためには、ストレス検査を法制化する必要があると同省は考えたのである。

 意識の低い中小企業経営者などに対し法制化でメンタルヘルスに目を向けさせることは、決してマイナスとはいえない。ただ、実効性があるのか、多くの識者が疑問点を指摘する。

 例えば医師でもある亀田高志・産業医大ソリューションズ社長は「医学的には、労働者のストレス状況なりメンタルヘルスの状態をスクリーニング(ふるいわけ)するのは容易なことではない」とは指摘する。

 また、渡部卓・帝京平成大学教授は次のように強調する。

「メンタル不調者を見つけ、あとは医師に任せることが企業の責任になってしまうのではいけない。職場にある問題点を見つけ、働きやすい職場へと改善することに取り組むこと。その姿勢がなければ、職場でのメンタル不調者は減らない」