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LINE、上場で迎える「ユーザ10億人」への試練 海外競合勢と正面衝突、その成算は?

文=福井晋/フリーライター
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 証券アナリストは「国内市場で行くところ敵なしの急成長をしていた時は、スタンプやLINEゲームの課金収入があったので、先行投資は自己資金や借り入れでなんとか賄えた。しかし『ユーザ10億人』の目標を掲げた途端、資金不足対策が緊急課題になってきた」と指摘する。

 それだけではない。10億人達成には米国市場でのシェアアップが欠かせず、そうなるとワッツアップとの直接対決が避けられない。ワッツアップは北米を中心に登録ユーザ数が5億人を超えるスマホ無料アプリの古参ベンダ。ユーザ数がLINEと同等の上、ワッツアップも「15年に10億人」とLINEと同様の目標を掲げ、「日本市場攻略」も視野に入れている。「進めば米国でワッツアップと正面衝突し、引けば日本へ攻め込まれる。LINEは好むと好まざるとにかかわらず、乏しい戦力でワッツアップとの対決が避けられない場所へ来てしまった」(証券アナリスト)

 そのLINEは海外進出本命の米国で苦戦している。米国ではようやく1000万人の登録ユーザを確保したものの、シェア的には微々たるもの。米国に深く根を張っているワッツアップの背中は遠い。

●カギ握るヒスパニック系ユーザの取り込み

 そこで、LINEが米国でワッツアップと勝負をするための足掛かりにしようとしているのが、5000万人を超えるヒスパニック系ユーザだ。LINEは目下、スペイン本国とスペイン語圏の中南米で登録ユーザ数が拡大を続けている。この流れを米国にも還流させ、スペイン語を話す米国のヒスパニック系ユーザをワッツアップから奪おうというシナリオだ。このため、今後は「米国でスペイン語のテレビCMを大量放映するほか、ヒスパニック系文化に合わせたサービスやスタンプの開発を迅速に行う」(LINE関係者)計画だ。

 だが、この米国攻略作戦の懸念材料として、収益性への影響が挙げられる。LINEでいくら無料通話・メールアプリのヒスパニック系ユーザ数を拡大しても、彼らがLINEゲームを利用してくれなければ先行投資がかさむばかりで、収益は得られない。したがって、ヒスパニック系ユーザに受けるLINEゲームの提供が不可欠になるが「開発に関する情報は今のところLINEから出されていない」(証券アナリスト)。

 もう1つ、決済の問題もある。ヒスパニック系ユーザは料金前払いのプリペイドが一般的で、料金後払いのポストペイの習慣は薄い。したがって「ポストペイのLINEゲームが決済の関係でどこまでヒスパニック系ユーザに浸透するかは、やってみなければわからない」(同)状態だ。

 国別のアプリダウンロード数ランキング(アップアニー調査、7月16日現在)をみても、LINEは国内でこそ15位だが、米国では179位、カナダでは233位。「LINEは北米では無名に等しいアプリ」(市場調査関係者)なのが実情である。

 こうした数々の壁を乗り越え、LINEは悲願の「ユーザ数10億人」を達成できるのか。上場後の同社の動向に注目が集まる。
(文=福井晋/フリーライター)

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