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たかのビューティ事件、不祥事の“告げ口”はイケナイ行為なのか?法的に正しい通報とは

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不二ビューティ本社(「Wikipedia」より/Kentin)
 弁護士法人アヴァンセリーガルグループの執行役員・弁護士で、企業法務から民事/刑事事件、インターネット関連法務など幅広い分野で豊富な経験を持つ山岸純氏が、話題のテーマや身近な紛争事案などについて、わかりやすく解説します。 

 大手エステティックサロンたかの友梨ビューティクリニック」(運営会社:株式会社不二ビューティ)の仙台店の女性従業員が同社の残業代一部未払い問題を労働基準監督署に申告したところ、これを知った同社の高野友梨社長が同店に来店し、他の従業員や管理職がいる前で、「つぶれるよ、ウチ。それで困らない?」などと、当該女性従業員の行動を非難するといった出来事が発生しました。その後、この女性従業員は、宮城県労働委員会に対する「不当労働行為の救済申立て」や、厚生労働省における公益通報手続きを行ったとのことです。

 この問題は、非難された女性従業員が記者会見を開き、録音した高野社長の音声を公開したことで話題になりました。

●「申告」は非難されることか?


 報道によると、女性従業員は以前から「残業代の一部未払い」を仙台労働基準監督署に申告していたようで、これを受けた同監督署は、会社に対し残業代を適正に支払うよう是正勧告を行っていました。

 労働基準法は、残業代について「通常の労働時間の賃金の25パーセント増の割増賃金を支払わなければならない」と定め、さらに、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています。したがって、会社の残業代の一部未払いが真実であれば、会社は法律違反を犯していることになります。

 ところで、高野社長が非難したように、会社の法律違反や不祥事を行政機関やマスコミなどの外部の機関に“告げ口”することは、その会社で働く者としてイケナイことなのでしょうか。

●会社の“論理”


 報道によると、高野社長は「この状況でこんだけ働けているのに、そういうふうにみんなに暴き出したりなんかして、あなた会社つぶしてもいいの」などと発言したとのことです。確かに、会社の不祥事や法律違反を暴露すれば、行政上のお咎めがなされたり、レピュテーションリスクが発生して業績が傾き、ついには会社が倒産してしまうこともあり得るでしょう。例えば、2007年に内部告発によって食品偽装が発覚したミートホープ社は、発覚からわずか2カ月足らずで破産に至っています。

 会社が破産すれば当然、従業員も職を失うわけですし、結果的には自分だけでなく他の従業員やその家族の生活にも大きな影響を与えることになります。このような大きな影響を考えれば、「みんながんばっているのに、あなたや他の従業員がきちんと給料をもらえることと、会社の不祥事や法律違反を暴露するのと、どっちが大切なの?」といった論理も頷けないわけではありません。実際、高野社長がエステサロン全店向けに送信したという文書の中で次のように断言したのも、おそらく同じような発想からきているのでしょう。

「何もできなかったみんなは、給与を得ながら、アカデミーに、エステの基礎を学び、一年間は大切なお客様に、拙い技術で迷惑をかけながら、一歩一歩腕を上げていけた。お客様のクレームや危害は、すべて会社が解決していった。先輩はみんなのために、残って教えてくれた。店長は自腹でごはんをご馳走してくれた。悩んでる時は一緒に泣いてくれた。(略)皆さんにいまの職場があるのは、先輩たちは汗と涙で頑張ってくれたから。感謝感謝ですね。(略)会社を誹謗することは、自分のこれまで頑張ってきた道を汚すことだと私は思います」