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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第12回

ネスレ、なぜコーヒーマシン50万台無償貸与?プラットフォーム戦略は成功するか?

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 実際にプリンタでは、割高なインク代という弱点を突いて、低価格で詰め替えインクを販売する企業も現れてきています。プリンタメーカー側にとっては、インクの販売が顧客生涯価値を高め、最終的な利益を上げる生命線になりますので、タダ乗りを断固阻止しなければなりません。そこで、訴訟を起こして低価格の代替品の販売差し止めを図るなど、ビジネスモデルの崩壊を食い止めようと尽力しているのです。

 もちろんネスレにとっても、コーヒーマシンを無料で提供し、コーヒーカプセルは低価格の他社製を利用されれば、オフィスで手軽に美味しいコーヒーを飲むというプラットフォームをつくったとしても「骨折り損のくたびれ儲け」に終わってしまします。ですから、プリンタ業界のようにビジネスを脅かす状況に陥らないためにも、なんらかの対策を講じる必要があります。

 その対策としてネスレが導入したのが「アンバサダー制度」です。

 アンバサダーとは、ネスレのコーヒーマシンを設置するオフィスの代表であり、オフィスの人にコーヒーマシンの利用を勧めたり、マシンを利用してコーヒーを飲んだ場合には飲んだ分のコーヒー代を回収したりする役割を担っています。つまり、アンバサダーとは、ネスレの社員ではないものの、ネスレの仕事を進んで代行する人なのです。

 このアンバサダーは、ほとんどボランティアのような活動なので、ネスレにとってはモチベーションを維持していくことが重要な鍵を握ります。例えば、ネスレではアンバサダーに気持ちよく働いてもらうために「サンクスパーティ」などを開催して、アンバサダーによりネスレのファンになってもらうことを試みています。サンクスパーティでは、ビュッフェ形式の食事が提供され、「キットカット」のなどの新製品の試食コーナーも用意されています。また、イベントでは、ネスレの高岡浩三社長をはじめとして、芸能人なども多数登場し、写真撮影を一緒に行うなど様々な企画でアンバサダーをもてなします。今後は全国10カ所でアンバサダーやその家族、友人を招待して5000人規模のイベントに拡大していく予定です。

 このようにアンバサダーとより深い関係を築いていけば、職場のコーヒーマシン利用も促進されることにつながりますし、仮に互換性のある他社のコーヒーカプセルが低価格で販売されることになっても、タダ乗りを防ぐこともできます。

 では、ネスレのこの戦略は成就するのでしょうか?

 まずは、計画通りに50万台のプラットフォームを構築することができるかが、重要な鍵を握っているといえるでしょう。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)

●安部徹也(あべ・てつや)
株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。1997年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業に留まらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』は、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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