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秋限定ビール、なぜアルコール高め?消費低迷に“頭をひねる”各社の巧妙戦略とは?

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キリンビール「秋味」
 8月下旬から、秋限定のビールやビール風飲料がビールメーカー各社から発売されている。これらは、アルコール度数が高めであることが特徴の一つとなっている。日本で製造されているビールのアルコール度数は5~5.5%が多いが、秋限定ビールは6~6.5%が中心だ。

 では、なぜ秋限定ビールはアルコール度数が高いのであろうか?

 秋限定ビールのパイオニアともいえる「秋味」を製造しているキリンビール広報部に問い合わせてみたところ、「秋に楽しむビールは、旬の食材と一緒に楽しみたいといったニーズが一層高まる傾向にあり、秋の食材に合ったコクや味わい、飲みごたえを追求した結果として、麦芽を多めに使用した『秋味』が誕生しております。アルコール度数が高いことには、特に意図はありません」という。

 つまり、意図的にアルコール度数を高くしているのではなく、秋の食材との相性を考慮したコクや味わいのビールをつくったところ、結果的に高くなったというわけだ。ちなみにキリンはミツカンの「味ぽん」と連動し、秋の味覚の代表格である食材を共通テーマに掲げ、販売促進も行っている。

 秋限定ビール・発泡酒を販売している他社にも聞いてみたところ、「秋は脂の乗った魚や風味豊かな食材などを用い、味のしっかりした料理も多いので、コクとアルコールが強いほうが好まれる傾向にある」と解説する。

●消費低迷するビール業界

 2008年以降、業界全体のビールおよび発泡酒の出荷量は減少傾向にある。伸び悩みが続く中で、各社は期間限定や数量限定で販売する商品を増やすなど、消費促進の手を数々打ち出している。例えば、サッポロビールは12年にセブン&アイ・ホールディングスと提携し、プライベートブランド(PB)商品である「セブンプレミアム100%モルト」を発売した。

 これをきっかけとして、大手各社がPBビールにこぞって参入。アサヒビールは「ザ・エクストラ」、キリンは「グランドキリン」、サントリー酒類は「セブンゴールド ザ・ゴールドクラス」をそれぞれセブン&アイから発売し、さながらPBビール戦国時代の様相を呈している。

 PB商品は、小売りの強力な販売網を活用できるメリットがある一方で、既存商品の価格やブランド力の低下につながる恐れがあるなどデメリットもある。新商品開発に当たっては低価格を求められるが、ビールメーカーの信用を守るために品質は保持しなければならない。

 そんな中でキリンは、セブン-イレブン限定で発売した「グランドキリン」の好調な売れ行きを受けて他のコンビニにも同ブランドを広げ、それぞれのコンビニごとに限定商品を開発するなど、巧妙な戦略でブランド展開を図っている。9月23日にはファミリーマート限定で「グランドキリン ホップフルーティ」を発売するという。

 ビールの消費が最も増えるのは暑い夏だが、夏が過ぎても急激に売り上げが落ち込まないように各社は頭をひねっている。「食欲の秋」に、食べ物と合う飲み物であることを前面に押し出して販売する戦略の秋限定ビール。限定モノ好きな日本人の特性に合わせた販売方法といえるだろう。
(文=西山雄基/マーケティングコンサルタント)