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『昼顔』、なぜ女性は大騒ぎ?理性を崩壊させる不倫の間抜けさ、注目の上戸の“尻拭い”

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『昼顔』公式サイト(「フジテレビ HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組やテレビの“楽しみ方”をお伝えします。

 今、女たちは忙しい。この夏、女心をわしづかみにした連続テレビドラマが軒並み佳境を迎えているからだ。NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』では、あるときは「村岡印刷(鈴木亮平)萌え」で心奪われ、あるときは「嘉納伝助(吉田鋼太郎)萌え」でときめき、そして、敗戦を迎えて、生き様ブレブレだった醍醐さん(高梨臨)とこれからアイデンティティの崩壊が訪れるであろう吉太郎(賀来賢人)がどうなるのか。次から次へとラブアフェアー、気分は中学生女子。もちろん朝ドラだから生々しさは控えめだが、朝っぱらから大忙しである。

 もう少し生臭さと精神性発汗を欲する人は、がっつり不倫をテーマに据えた『昼顔』(フジテレビ系)である。ベビーフェイスに破壊力のある巨乳というアンバランスを生かした上戸彩が、いい感じで罪悪感に苛まれながら不倫に溺れていく物語だ。相手役の斎藤工はメガネ男子のテイだが、体の方々から滲み出るいやらしさがあり、世の女性は大騒ぎである。斎藤は下着が立体裁断なのか、急所が非常に気になるという声も。もう一組、吉瀬美智子&北村一輝の「美女と野獣」系不倫カップルも、往年の成人向けビデオの秀作のような組み合わせで、なかなかに官能的である。

 ビジュアルのエロスはさておき。『昼顔』で心を奪われるのは、おそらく「不倫の落とし前」。不倫は最低最悪の裏切り行為と大上段に構えつつも、背徳の味わいは蜜の味であることを表現してやまない。否定派と肯定派にぱっきり別れるのではなく、その「二律背反っぷり」を巧みに織り込んでいるところがうまいのである。

 そりゃみんなわかってるってば、配偶者以外の人に心も身体も惹かれていくのはよろしくないってことは。それでも理性が飛んで、常識や世間体が崩壊して、腑抜けになっちゃうのが人間だもの。不倫ドラマはおそらく「罪悪感の描き方」にかかっているのだろう。

 上戸の罪悪感はいくつものステップで積み重ねられていく。まずは夫。人畜無害だが自分大好きな夫(鈴木浩介)が明るい日常を送れば送るほど、上戸は罪の意識を感じていく。夫の振る舞いに対して、今までムカついていたこと(ママと呼ばれることなど)が「不倫している負い目と秘密」から気にならなくなり、むしろ上機嫌で過ごせるようになる。これ、非常にリアルな描写でもある。妻が優しいときは気をつけろ、という教訓でもある。

 そして、義母(高畑淳子)の存在。夫に裏切られた経験があるため、不倫に対しては異様な拒否反応を示す女だ。自分の息子が不倫しているんじゃないかと疑い、自分を責め、夫への恨みを糧に生きているようなタイプ。そんな義母をも欺くのはかなり重い責め苦となる。普段はおどおどもっさりしているのに、嫁の不倫を知って目が据わっていく高畑。今回は高畑の高い演技力が画面上にあふれてくるようだ。一番怖いかもしれない。

 最後に、斎藤の妻(伊藤歩)。夫と不倫をしていた上戸に対して、インテリ女らしく、容赦なく外堀を固めていく。学問の象徴である図書館で上戸に殴りかかるという設定は、研究者である伊藤の怒りを表現する最適のシーンでもあった。

 あと2回で終わるのだが、不倫の間抜けさと切なさ、「覆水盆に返らず」感は観ているこちらが痛みを感じるほど表現されてきたと思う。世の女性たちは「上戸はどう尻拭いするのか」が気になって仕方がない。貫くか、逃げるか、どちらにしても茨の道だけれど。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。「週刊新潮」(新潮社)の連載記事をまとめた単行本『TV大人の視聴』(講談社)が11月11日に発売予定。