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井上久男『「内なる敵」に沈む朝日新聞』(9月20日)

朝日誤報騒動の元凶・木村社長の責任逃れと保身 社内派閥抗争と出世主義の末路

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朝日新聞の記事取り消しについて報じる9月12日付新聞各紙
 朝日新聞の「敵」は朝日にある。かつて、トヨタ自動車の奥田碩氏が社長時代、「トヨタの敵はトヨタ」と言ったが、その心は、「資金力も販売力も豊富なトヨタが衰退するとすれば、それは驕りからの自滅である」ということにある。同様に従軍慰安婦検証報道に始まった世間の朝日批判、事後対応のまずさの本質的要因は、危機意識の欠乏からくる内部の権力闘争にある。ある朝日現役社員がこう話す。

「いま、部長クラス以上の中堅幹部の中には、池上彰氏のコラム掲載見合わせや『吉田調書誤報問題』によって社内に多くの処分者が出ることで、玉突き人事で代わりに自分が昇進して新たなポストが得られるとか、今の地位が最終ポジションだったのが、さらに良いポストが得られるかもしれないと思っている人が少なからずいます」

 筆者はかつて朝日記者として約13年間勤務し、同社が嫌になって10年前にフリージャーナリストに転じたが、現役社員が話しているような雰囲気があるのだとすれば、会社の風土はまったく変わっていない。朝日の風土を一言で述べなさいと言われれば、筆者はOBとして「社員同士が足の引っ張り合いを得意とする会社」と答える。こうした風土になる理由は、朝日記者にはジャーナリストとしての矜持を持っている人よりも、「株式会社朝日新聞」の社員であることを自慢に思っている人が多いからである。権力批判を標榜していても、実は内部はヒラメサラリーマンだらけなのである。

 経済部の先輩から、こんな逸話を聞いたことがある。

「昔、部員旅行の際に地引網をしたら、当時の部長が役員候補だったので、事前に出世魚を買って網の中に入れておいて、『部長、出世魚でございます。まさしく部長の将来です』と言って盛り上がった」

 自分はその場にいたわけではないが、いかにもありそうな話だと思った。このような風土になる理由をさらに考えていくと、出世するほど給料が高くなり、本来なら地位が高くなれば責任も重くなるはずなのに、朝日の場合は管理職になると部下に責任を押し付けやすくなるからである。社内権力者には弱いが、下には強い人がやたらと多い。要は、管理職や役員にとっては「天国」のような会社なのである。そして、記者で一生過ごそうと思えば、給料は上がらないわ、自腹の取材費は必要になるわで、経済的には損をする。朝日記者の場合、交通費などを除き、日ごろ必要になる喫茶代などの会合費は記者負担が大原則である。「給料が高いのは、その費用が含まれているから」と説明されることもある。現在では賃金制度の改訂により、給料は世間の大企業に比べて高いわけではない。

 そして、「社内サラ金」があり、取材費が足りなくなれば、会社が経営する「朝日新聞信用組合」という社内金融機関で、社員証を出せば無担保でかなりのお金が借りられる。外部との交際を大事にする記者の中には、「社内サラ金」に頼っている人も少なからずいる。それでも生涯一記者を貫きたいと思っている先輩・後輩はいるが、ほとんどはサラリーマンとしての栄達を望む。そっちの方が得だからであり、人間の性から考えてこれは分からないことではない。