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山田修「戦略的ビジネス論~和根洋栽編~」(9月24日)

LIXIL、伝統的日本企業に欧米流経営導入、なぜ“まれな”成功例に?海外事業急拡大

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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 日本企業から外資系のトップへ転身という点では、前回連載で取り上げたベネッセホールディングス会長兼社長の原田泳幸氏と同様なキャリア・パスを歩いてきた。原田氏はアップルコンピュータ(現アップルジャパン)代表から日本マクドナルド社長へ転籍したタイミングから、稀代の個性派経営者といわれる米アップル創業者のスティーブ・ジョブズとの接触はそんなに深くないように見受けられる。

 しかし、藤森氏はGEで20世紀最大の経営者と称賛高いジャック・ウェルチ元会長からの評価と薫陶を受けて育ってきた経営者だ。01年には米GE上級副社長に就任している藤森氏は、ウェルチとの体験を次のように語っている。

「十数年にわたってウェルチに鍛え上げられました。これは本当に強烈な体験でしたね。若い頃にウェルチから刺激を受けたことが、私の基本的な考え方を形成していると思います。」(11年12月14日付人事情報サイト「jin-jour」記事より)

●欧米的な企業文化を伝統的な日本企業へ持ち込み

「外資族経営者」が伝統的な日本企業に招聘されると、企業文化アレルギーを引き起こすケースが多い。異質なものが組織のトップに就くのだから当然だ。その組織アレルギーにより、筆者の場合は早々に排除されてしまったわけだ。

 一方、藤森氏は果断に欧米的な企業文化をLIXILグループという伝統的な日本の大企業に持ち込んだ。同氏が振り返る。

「全体として大規模のコスト削減を行い、収益性を高めるには別なやり方をする必要があると考えた。そこで各事業会社の社長をすべて部長にし、一つの会社にした。」(13年1月18日付経営情報サイト「GLOBIS.JP」より)

 これは組織改革でもあるが、藤森氏のヘゲモニー確立セレモニーともいえる。これが通れば、その後は旧来の重役たちは藤森氏に楯突くことはできない。こうしてリーダーシップを確立してから、同氏は次々と矢を放った。

「LIXILには強いブランド、強い商品があり、様々な分野で業界のNo.1、No.2のシェアを握っている。しかし残念ながら、いずれもあくまで日本国内の話だ。ジャック(・ウェルチ)は常々『世界でNo.1、No.2でなければ、クローズするか売るかだ』と言っていた。そうしたマインドを企業カルチャーとして埋め込む必要があった。ちなみにこれはいきなり断行したわけではなく、3年ぐらいをかけ、まずは執行役員の半数程度を“外様”にするところからやった。野村證券やファナック、三洋電機など異分野の人材を入れ、そのトドメとして組織形態を変え、一気に会社のカルチャーを変え、コスト構造もきれいにし、世界に打って出よう、ということで船出した」(同)

 周到にして果断、このように藤森氏は伝統的な大企業を大変革して、LIXILにグローバル化の道程を歩み始めさせているのだ。このままLIXILグループを3兆円、5兆円規模の企業に育て上げれば、孫正義氏や柳井正氏などと並ぶ「平成の大経営者」の道を上り詰めていくかもしれない。創業家が存在する日本の伝統的なメーカーで、外資出身の経営者が辣腕を振るっているのは痛快だ。藤森氏の経営を刮目してみていきたい。

 ちなみに、今回みてきたような藤森氏が主導するLIXILの成長は、住生活グループと称していた当時に外部から、それも外資畑の藤森氏を招聘、抜擢した元会長で創業家の潮田洋一郎氏の功績によるところが大きいが、それはまた別の機会に書きたい。

 上場会社でも外部から経営者を招聘しようとして苦労している会社も多いが、次回連載ではその事例や実態を紹介したい。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)

※「和根洋栽」とは、「日本企業の経営トップに外資系企業出身者が就く」という意味の造語です。

2014年10月18日(土)~
経営者JP主催
第10期、迫力の開講!第10期記念特別企画も予定!
経営者のための「実践・経営者ブートキャンプ」講座・第10期
主任講師:山田修氏(MBA経営 代表取締役)

「経営者ブートキャンプ第10期」の説明会も含んだ特別セミナーも開講するので、興味のある方には十分に説明する。
2014年9月26日(金)16:00~18:00(受付:15:40~)、19:00~21:00(受付:18:40~)
経営者JP主催
“戦略3部作”刊行記念特別講座
「戦略と実行、そして成功」黄金のセオリー!
講師:山田修氏(MBA経営 代表取締役)

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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