ビジネスジャーナル > 企業ニュース > ダイエー崩壊を招いた血への執念  > 2ページ目
NEW

イオンに屈したダイエー 流通王国崩壊を招いた、中内功の人間不信と“血への執念”

文=編集部
【この記事のキーワード】, ,

●政治問題としてのダイエー処理

 04年には巨額の負債を抱え産業再生機構の支援を受けたが、ダイエーの再建は思うように進まなかった。再生機構が手を付けたのは店舗の閉鎖と資産売却による不良債権処理だけだった。この頃、ダイエー問題は政治問題の側面も有していた。金融庁対経済産業省、つまりは旧・大蔵省と旧・通産省という2つの中央官庁の主導権争いである。竹中平蔵金融・経済財政担当相と中川昭一経済産業相が対立し、小泉純一郎首相が裁定した。事の始まりは、UFJホールディングス(現・三菱UFJフィナンシャル・グループ)の経営危機。傘下のUFJ銀行が抱える不良債権処理に、金融庁は産業再生機構の活用を画策した。その最終ターゲットがダイエーであり、竹中氏がダイエー処理を想定して創設したのが再生機構だといわれている。

 02年9月に金融担当相に就任した竹中氏は、大手行の不良債権問題を解決するために「金融再生プログラム」を策定。大手行の不良債権比率を半減させるという目標を掲げた。その実現のためには不良債権を銀行から切り離す必要がある。そこで不良債権化している企業の債権を銀行から買い取る受け皿としての公的機関が必要になる。再生機構はこうした時代背景から生まれた。バブル期の不良債権の象徴で、かつ知名度抜群のダイエーはもってこいの獲物だった。

 省庁間の抗争が火を噴いたのは04年8月。ダイエーの主力行であるUFJ銀行、みずほコーポレート銀行、三井住友銀行の3行が、ダイエー再建について再生機構の活用を検討中との報道が流れた。ダイエーの唱える自主再建では不良債権は減らない。UFJ銀行の不良債権を減らすには、ダイエーを再生機構に送らなければならない。金融庁の隠された狙いもここにあった。一方、経産省は所管官庁としてダイエー再建の主導権を握りたい。ダイエーが再生機構送りになれば、金融庁がダイエーの生殺与奪権を握る。金融庁に主導権を奪われるのを阻止するのが狙いだった。結局「介入は即刻、やめろ」という小泉首相の経産省に対する鶴の一声で、ダイエーに対する再生機構活用が決まった。

 その後06年、総合商社の丸紅が再生機構からダイエーを698億円で買収し経営権を握ったが、経営再建に失敗。ダイエーとの取引が拡大し業績アップにつながるという、従来の大手商社の発想でダイエーを引き受け、高い授業料を払う羽目に陥った。丸紅は西見徹氏、桑原道夫氏と2代続けて社長を送り込んだが、丸紅は水面下で米ウォルマートにダイエーを売る交渉をしていたといわれている。

 ダイエーが持つ店舗は駅前などの立地の良さが魅力との見方もある一方、軒並み老朽化していて客を呼ぶ力を失っているとの指摘も多い。1957年に中内氏がゼロから創業し、戦後の経済成長と軌を一にして流通王国にまで成長したダイエーは、名実ともに終わりを告げようとしている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

イオンに屈したダイエー 流通王国崩壊を招いた、中内功の人間不信と“血への執念”のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!