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『ムカつくことには合理性がある~若き老害・常見陽平が吠える』(10月6日)

仕事をしていない風の老害社員は、本当に仕事をしていないのか?大きく組織に貢献?

文=常見陽平/評論家、コラムニスト、MC

 
 試合内容では、若い選手の体力、運動神経が目立つが、集客ではベテランのほうが有利。まず、この事実を認めなければならない。

●「老害」には存在意義がある

 プロレス談義はこれくらいにして、職場の話をしよう。皆さんの職場にも、上の世代で仕事ができるか働いているかどうか怪しいのに社内に君臨している人は、1人や2人いるだろう。「こいつ、働けよ」「使えねえオヤジだ」と思われてしまう人たちである。いや、さすがにこういう「ノンワーキング・リッチ」といわれる人たちは駆逐されてきたとは思うのだが、とはいえ、こういう感情を抱いたことは1度や2度はあるだろう。

 これまた余談だが、その上司がサボっているかどうかを判断するには、マイクロソフトのOS「Windows」にアクセサリとしてついているゲーム、ソリティアをやらせてみると良い。これが異常に上手い人というのは、サボっている可能性大である。特に、机が人と離れていて、パソコンの画面を覗かれない部長は上手い。

 ただ、こうした人々は「仕事をしていない」といえるのだろうか。そもそも、仕事とは何かということを考えたい。せっせと企画書を書く、顧客を訪問する、会議をまとめるなどは、若手から中堅の仕事である。彼らと「仕事をしていない」ようにみえる上司を同列に見てはいけない。彼らは仕事をしていなそうで、実はしている。特に、人脈、経験などの点で組織に貢献しているのである。

 若手なら何度も訪問をして信頼関係を構築しなければいけない取引先も、彼らが商談に行けば、先方も経営トップ層が出てきて、あっという間に商談がまとまる。業界内人脈も豊富なので、最新の情報もどんどん入ってくる。何かトラブルがあった際も、それこそ笑っておさめることすら可能なのだ。

 この仕事のできない風の老害社員と、馬場さんを並べて議論するのはややたとえとして適切ではないのだが……。ただ、前述した四天王ほどの激しい試合をするのは無理だとしても、地方での大会を企画する、ちゃんとお客さんを動員する、やってきたお客さんに満足してもらうという「仕事」を立派に果たしたという意味で、馬場さんは立派に仕事をしていたわけである。馬場さんほど貢献してはいないだろうが、働き盛りの若手〜中堅のように激しく働いてはいなくて、時にはサボっている風にみえる上司も、実はちゃんと貢献しているのだという視点を持つと、上の世代に対して、少しだけ優しくなれることだろう。

 上の世代に対して「こいつ、使えねえな」と思うのではなく、「いや、こいつも何か仕事しているはずだ」という視点を持つと、見方が変わるだろう。もっとも、本当にお荷物でお給料だけもらっている中高年というのもいるのだけれども。
(文=常見陽平/評論家、コラムニスト、MC)

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

常見陽平/千葉商科大学准教授、働き方評論家

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)後、株式会社リクルートに入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年より准教授。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。主な著書に『「就活」と日本社会』(NHK出版)や『「意識高い系」という病』などがある。
常見陽平公式サイト

Twitter:@yoheitsunemi

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