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山崎元「耳の痛い話」(10月7日)

安倍政権、消費再増税で官僚の「用済み」後に起こる事態 一気に経済失速と失態続出か

文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表
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●景気の足を引っ張る、消費税連続引き上げ

 また、消費税率の連続引き上げは、よほどの対策を講じない限り、ほぼ間違いなく景気の足を引っ張るだろう。「経済重視」が看板の安倍政権にとっては痛手である。安倍政権としては、こうした事態を防ぐために、消費税率の引き上げを「1年だけ先送りする」と宣言する方法があり得る。1年間であれば、次の内閣に替わって状況が不確実になるよりも、安倍内閣で消費税率引き上げを完成させたいと考えて、官僚集団がサポートを続けるかもしれない。

 他方、「1年先送り」を官僚集団が不満とした場合、税率引き上げの先送りは安倍内閣の急速な求心力低下につながる可能性もある。安倍政権としては、消費税率の10%への引き上げと経済失速の回避が両立できるような政策があると好ましい。安倍首相の経済政策のブレーンとされる浜田宏一内閣官房参与が消費税率引き上げに対して、法人税率の大幅引き下げをセットにするなら考えてもいい、と発言していることは、消費税率引き上げの先送りが難しいと見た、いわば「プランB」なのかもしれない。

 しかし、法人税率の大幅引き下げにより消費税率の影響を相殺するというのは、現実的には難しい。税率引き上げの主な影響は個人消費に表れるので、所得減税、給付金の支払い、年金保険料の減額など、個人にキャッシュが渡る政策が効果的であるが、税率の引き上げ可否が判断される年末頃には、来年度予算の骨格があらかたできてしまうので、こうした対策を間に合わせるのは同様に難しい。また、官僚集団は自分たちの関与が減る「減税」や「現金給付」を好まない傾向がある。

 以上みてきた「読み筋」は、日本の政府を動かしている実質的な意思決定者が官僚集団であり(誰か個人として強力な「黒幕」がいるのではない)、彼らのほうが政治家集団よりも強力であることと、官僚集団が消費税率の引き上げを何がなんでも実現したいと思っていること2点を仮定して、経済政策と関係者の利害を考えてみたものだ。消費税率問題を評価する一つの視点として、ご参考になると幸いだ。
(文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表)

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味
評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

Twitter:@yamagen_jp

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