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安部徹也「MBA的ビジネス実践塾」第14回

コンビニコーヒー戦争に異変?ローソン、差別化戦略撤回でセブンに対抗、潜む2つの壁

文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO
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(2)ローソンが越えなければいけない内部の壁:オペレーションの壁

 戦いに勝利するためには、もちろん外部のライバル企業に対して競争優位を築いていかなければなりませんが、内部にも越えなければならない壁が存在します。それが、オペレーションの壁です。

 ローソンの場合、カウンターコーヒーの売りのひとつに、1杯1杯店員が淹れて手渡しする接客があります。ライバル2社がセルフサービスで提供するのとは違って、ローソンの場合、手間と時間がかかるのです。

 セブンではセルフサービスにもかかわらずコーヒーマシンの前には行列ができることも珍しくなく、仮にローソンでも同じくらいコーヒーが売れたとしたら、1杯1杯店員がコーヒーを淹れることがネックになり、セブン以上にレジの前に行列ができることも予想されます。顧客から速さと利便性が求められるコンビニにとって、これは致命傷になりかねません。

 特に、多くの顧客がコンビニコーヒーを購入する朝の出勤前やランチの後などの時間帯は、顧客は業務開始までに買い物を済ませて席に着かなければならないという思いから、もしレジ前に長い行列ができていれば、他のコンビニを利用する可能性も高くなります。今やコンビニの数は全国で5万店を超え、場所によっては数十メートルも歩けば別のコンビニがあることも珍しくありません。

 そこで、各コンビニにとって売り上げ機会を逃さないためにも、顧客がストレスなくスムーズに買い物をできる環境を実現することが至上命題といえます。例えばJR東日本系列のNEWDAYSは、Suicaも利用できるセルフレジを導入し、朝晩のラッシュアワーの利用客を少しでも他店に逃すまいと、レジの効率化に取り組んでいます。

 もし、ローソンがコーヒーの値下げによって来店客を予想以上に増やし、レジでの待ち時間が長時間化すれば、顧客を獲得するどころか他社への顧客の流出につながりかねません。企業にとって顧客が爆発的に増加するのは歓迎すべきことですが、もしそれが予想を大きく上回るようだと逆効果になりかねません。その際には、顧客をいかに増やすかだけでなく、顧客が増えた後のオペレーションまで十分に考慮して、顧客満足度を下げないような対策を施しておく必要があります。

 もちろん、ローソンはすでにコーヒー値下げ後の店内オペレーションを検証してさまざまな施策を検討済みのはずですが、もし問題が発生するようであれば、コーヒーマシンのセルフ化や混雑する時間のみ専用レジを設けるなど、内部の壁を克服していく必要があるでしょう。

 このように、コンビニ業界のチャレンジャーであるローソンとしては、値下げでリーダーのセブンと正面から戦うのはセオリー破りの戦略といえますが、この戦略が成功を収めるか否かは、外部の壁と内部の壁を乗り越えることができるかどうかにかかっているといえるのです。
(文=安部徹也/MBA Solution代表取締役CEO)

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●安部徹也(あべ・てつや)
株式会社 MBA Solution代表取締役CEO。1990年、九州大学経済学部経営学科卒業後、現・三井住友銀行赤坂支店入行。1997年、銀行を退職しアメリカへ留学。インターナショナルビジネスで全米No.1スクールであるThunderbirdにてMBAを取得。MBAとして成績優秀者のみが加入を許可される組織、ベータ・ガンマ・シグマ会員。2001年、ビジネススクール卒業後、米国人パートナーと経営コンサルティング事業を開始。MBA Solutionを設立し代表に就任。現在、本業に留まらず、各種マスメディアへの出演、ビジネス書の執筆、講演など多方面で活躍中。主宰する『ビジネスパーソン最強化プロジェクト』は、2万5000人以上のビジネスパーソンが参加し、無料のメールマガジンを通してMBA理論を学んでいる。

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